2021 Fiscal Year Research-status Report
4色型色覚特異的マイクロRNAから探る色覚の制御と進化
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21K19280
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
日下部 岳広 甲南大学, 理工学部, 教授 (40280862)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 4色型色覚 / マイクロRNA / 錐体視細胞 / メダカ / 色覚進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
4色型の色覚をもつ鳥類や魚類の網膜の錐体視細胞で特異的に発現するマイクロRNA(miR-726)について、2021年度は主に、脊椎動物ゲノムの網羅的な調査を行うとともに、miR-726ノックアウトメダカを作製し、ノックアウトメダカ系統と野生型系統の比較解析を行った。以下に、それぞれの解析について具体的に述べる。 脊椎動物ゲノムの網羅的な調査:生態、生理、形態の多様性が顕著な硬骨魚類に焦点を絞り、ゲノム中のmiR-726の有無、構造、オプシン遺伝子など色覚に関わる遺伝子の構成等について網羅的な解析を行った。硬骨魚においてmiR-726は高度に保存されているが、いくつかの系統でmiR-726を失っていた。またシード配列に変異をもつ種がみつかった。miR-726の喪失は、赤オプシン遺伝子(LWS)または青オプシン遺伝子(SWS2)の喪失を伴うことが多く、LWSとSWS2を失い、miR-726のみが残存する事例はみられなかった。 miR-726欠損個体の作製とトランスクリプトーム解析:CRISPR/Cas9ゲノム編集法によりmiR-726欠損メダカ系統を作製した。また、miR-726上流に存在するエンハンサー領域を欠失したメダカ系統を作製した。野生型メダカとmiR-726欠損メダカ系統の網膜における遺伝子発現(トランスクリプトーム)と組織学的形態の比較解析を行った。トランスクリプトーム解析から、網膜における細胞分化や運命決定に関わる遺伝子群の発現の変化、マイクロRNAの新しい転写後調節の可能性を示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りの解析を実施し、いくつかの興味深い新知見が得られている。全ゲノム配列が解読された脊椎動物種が増えたため、比較ゲノムによるより詳細な解析が可能となった。メダカのノックアウト系統を用いたトランスクリプトーム解析から、網膜における細胞分化や運命決定に関わる遺伝子群の発現の変化、マイクロRNAの新しい転写後調節の可能性を示唆する結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロRNAは直接的には転写後調節に作用すると考えられるため、ノックアウト系統と野生型の比較解析においては、トランスクリプトーム解析に加え、プロテオーム解析が重要である。今後はプロテオーム解析にも注力する。現在は遺伝子レベル、組織細胞レベルの解析が中心であるので、生理学的実験、行動実験等により色覚機能を解析する。また、さまざまな脊椎動物で見出されたmiR-726変異のメダカモデルを用いた再現実験、miR-726のシード配列に変異が生じているニワトリ等について、網膜の遺伝子発現や細胞構成、色覚機能の解析を行う。
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Causes of Carryover |
当初見込みより多くの種のゲノム配列情報およびトランスクリプトーム情報が公開されたため、解析の順序を入れ替え情報学的解析を優先して行い、これらの結果を受けて行う一部の実験解析を計画を変更して次年度に行うこととしたため。
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[Presentation] メダカ長波長感受性錐体特異的エンハンサーLWS-CNR-Aの機能解析2021
Author(s)
福沢悠介, 日下尚美, 小林恵理佳, 大西雅也, 川上泰治, 横森類, 鈴木穣, 中井謙太, 行者蕗, 大道裕, 日下部岳広
Organizer
第44回日本分子生物学会年会
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