2022 Fiscal Year Research-status Report
意識を支える脳幹網様体・巨大神経細胞群の分子生物学的基盤
Project/Area Number |
21K19431
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八木 健 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授 (10241241)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 脳幹網様体 / 巨大神経網様核細胞 / クラスター型プロトカドヘリン / 意識 / 覚醒 / 光遺伝学 / 両作動性神経細胞 / マルチモーダル |
Outline of Annual Research Achievements |
脳幹網様体は身体の内部環境のホメオスタシス調節、外部環境からのマルチモーダルな感覚入力と運動制御、覚醒状態や意識を支える領域として知られ、複雑な神経ネットワークとなっている。特に、脳幹網様体の巨大神経網様核(NRG: nucleus reticular gigantocellularis)細胞は、1神経細胞が上行性と下行性に投射し、マルチモーダルな感覚刺激(匂い、視覚、聴覚、触覚、前庭、運動)に反応、運動パターンや意識・覚醒を制御していること、グルタミン酸作動性神経細胞やGABA作動性神経細胞だけでなく両グルタミン酸・GABA作動性神経細胞が存在すること、脳において最も早く分化する神経細胞であることも明らかとなっている。本研究の目的は、脳の統合的機能を制御する脳幹網様体のNRG細胞を分子生理学的に明らかにし、神経活動を光操作する方法を開発することにより、マルチモーダルな感覚入力や内的環境、運動制御、覚醒・睡眠を統合し、意識を支えるNRG細胞の分子神経生物学的基盤を明らかにすることである。本年度は、グルタミン酸作動性神経細胞でFLP発現するvGluT2-Flp、GABA作動性神経細胞でCRE発現するGad1-Creとfrt/flox組み換え依存的にTdTomamoが発現するAi65マウスを交配することにより両グルタミン酸・GABA作動性神経細胞(Glu/GABA神経細胞)でのみtdTomamo が発現するマウスの作製に成功し、Glu/GABA神経細胞と神経投射領域の分布を透明化した全脳において解析し、脳幹網様体に存在するGlu/GABA作動性n巨大神経網様核細胞の同定に成功した。また、化学遺伝学的手法により、視床下部乳頭上核(SuM)に存在するGlu/GABA神経細胞を活性化・不活性化させることに成功し、探索行動制御への関与を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、両グルタミン酸・GABA作動性神経細胞(Glu/GABA神経細胞)でtdTomamo が発現するマウスの作製に成功した。これにより、脳幹網様体に存在するGlu/GABA作動性n巨大神経網様核細胞の同定に成功した。さらに、化学遺伝学的手法により、視床下部乳頭上核(SuM)に存在するGlu/GABA神経細胞が探索行動制御への関与が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、両グルタミン酸・GABA作動性神経細胞(Glu/GABA神経細胞)でtdTomamo が発現するマウスを用いて、Glu/GABA神経細胞と神経投射領域の分布を透明化した全脳において3Dにより詳細に解析する。また、frt/flox組み換え依存的にチャネルロドプシン2(ChR2)が発現するアデノ随伴ウイルスを脳幹網様体NRG細胞に感染させ、Glu/GABA-NRG細胞の神経細胞と神経投射領域の分布を解析するとともに、青色光照射により神経活動誘発を行い、マウス個体における覚醒レベル、運動パターン制御へのGlu/GABA-NRG細胞の関与について解析を行うことにより、Glu/GABA-NRG細胞の神経回路網と生理学的意義を明らかにする。さらに、脳幹網様体に存在するNRG細胞をホールセルパッチクランプ法により生理学的特徴を解析し、細胞質を吸引してRamDA-seq法を用いてRNAシーケンスを行い、NRG細胞のシングルセルレベルでの生理学的特徴と遺伝子発現プロファイルを解析する。
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Causes of Carryover |
本研究では、両グルタミン酸・GABA作動性神経細胞(Glu/GABA神経細胞)でtdTomamo が発現するマウスを用いて、Glu/GABA神経細胞となる脳幹網様体NRG細胞を同定し、分子生物学的特性、形態、投射パターン、行動制御への関与を明らかにすることを計画している。本年度、分子生物学的特徴を明らかにするために、NRG細胞をホールセルパッチクランプ法により生理学的特徴を解析し、細胞質を吸引してRamDA-seq法を用いてRNAシーケンスを行い、NRG細胞のシングルセルレベルでの生理学的特徴と遺伝子発現プロファイルを解析する予定であった。しかし、コロナ感染の影響で共同研究でのシングルセル解析が実施できず、次年度での解析が必要となった。また、マウス個体における覚醒レベル、運動パターン制御へのGlu/GABA-NRG細胞の関与を明らかにするアデノ随伴ウイルス感染を用いた光遺伝学的操作実験の実験回数が、結果を結論づけるまで十分でなく、次年度も継続して実験を行う必要がある。
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