2021 Fiscal Year Research-status Report
Fusobacterium nucleatum の遺伝学的解析手法の確立
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21K19598
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 美加子 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (40271027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大嶋 淳 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (30755450)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 歯学 / 口腔細菌学 / 微生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
Fusobacterium nucleatumは、歯周疾患だけでなく癌との関連も疑われるものの、逆遺伝学的解析手法がまだ十分に確立されていない。F. nucleatumに関する遺伝学的解析手法を確立することができれば、宿主細胞との相互作用をさらに詳細に分析することができるようになり、歯周疾患や腸疾患を含む様々な慢性炎症の病態解明を一気に加速することができると考えられる。そこで本研究ではF. nucleatumに関する遺伝学的解析手法を確立し、宿主細胞との相互作用に基づく感染分子機構を詳細に解明するための研究基盤を創出することを目的とした。 本年度はまず、F. nucleatum 病原因子の機能欠失株作製技法の確立をめざし検討を行った。F. nucleatum と同じく口腔内に生息するグラム陰性偏性嫌気性細菌であるP. gingivalisは遺伝子改変プロトコールがすでに確立されているため、同様の手法を用いてF. nucleatumの遺伝子変異体の作製を試みたが、変異体を獲得することはできなかった。本菌はP. gingivalisと違い、相同組換え能が欠如もしくは著しく低いことが示唆された。 F. nucleatum への遺伝子の導入方法、使用機器、導入条件を検討するために、タグおよび薬剤耐性遺伝子を組み込んだプラスミドの遺伝子導入を行い、その発現を定量RT-PCRにて確認した。その結果、エレクトロポレーション法により効率的に遺伝子を菌体内に導入する方法を確立した。現時点では一過性の遺伝子発現まで成功していることは確認したが、今後はそこから変異株のみを選別取得する方法を確立する必要がある。 次年度は選別に用いる薬剤の選択や使用条件についてさらなる検討を進め、F. nucleatumに対する遺伝子改変操作方法の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、F. nucleatum感染に対する宿主防御機構における主要シグナルを同定し、F. nucleatumが炎症応答を引き起こす病原因子の発見とその欠損株の作製を行うことを目標としている。まずはF. nucleatum 病原因子の機能欠失株作製技法の確立をめざしており、本年度の検証において遺伝子の導入方法、使用機器、導入条件までは確立することができた。一過性の遺伝子発現までは成功していることは確認したが、今後はそこから変異株のみを選別取得する方法を確立する必要がある。2022年度は選別に用いる薬剤の選択や使用条件についてさらなる検討を進め、F. nucleatumに対する遺伝子改変操作方法の確立を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、CRISPR/Cas9技術等を用いたF. nucleatumの標的遺伝子変異株を作製する新規手法を創成し、マウス実験による病原性の評価により詳細な分子機構の解明につなげていく。変異株が得られれば実験的歯周炎モデル(歯周疾患に対する評価)、大腸がん細胞株移植モデル(腸疾患の進展に関する評価)およびマウス皮下チャンバーモデル(炎症惹起性の評価)を用いたin vivo 実験を行う予定である。また、本年度中に得られたデータを整理して、学会発表・論文発表を行うことも目標としている。
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Causes of Carryover |
当初参加を予定していた海外学会に参加しなかったため、学会参加費と旅費が不要であった。また、シークエンス解析費用が少なく済んだため。 次年度は現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。また,国内外の学会にも参加予定である。
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