2021 Fiscal Year Research-status Report
人間らしさを許容するハイブリッドインタラクティブな人機情系の在り方に関する研究
Project/Area Number |
21K19762
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
小木曽 公尚 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30379549)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 剛性制御 / 意思決定モデル / 感情ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,人間-機械-情報環境系を対象に考え,人の好みや意欲に配慮した動作支援や能力拡張に資する“ 情報 ”と“ 力(ちから) ”のインタラクション(ハイブリッドインタラクション)の在り方をシステム論的に解明することを目的と定める.この研究目的を達成するため,今年度は,空気圧駆動系の擬人化による力のインタラクション,および,インセンティブ制御による情報のインタラクションの2課題について取り組んだ.今年度に得られた成果は,我々が開発した空気圧駆動系との力の相互作用を実現する制御技術,および,人間らしさを表す感情を取り入れた意思決定モデルを開発した. 空気圧駆動系の制御技術に関しては,McKibben型空気圧ゴム人工筋を用いた拮抗構造のアクチュエータに対し,関節角度および関節剛性を同時に制御するモデルベース制御技術を開発した(Shin, et. al.,IEEE/ASME Transactions on Mechatronics, 2022).また,拮抗構造の動的モデルを解析することで,制御可能な関節剛性の範囲を可視化することに成功した(Shin, et. al., Advanced Robotics, 2022). そして,意思決定モデルに関しては,人の非合理的な意思決定を感情に起因するものと捉え,感情の時間変化を非線形差分方程式でモデルし,部分観測マルコフ決定過程で記述される意思決定の合理性や,感情モデルにより起因する非合理性との割合をパラメータで調整可能な数理モデルを提案した(Iinuma, et. al., Mathematical and Computer Modelling of Dynamical Systems, 2021).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空気圧駆動系の角度剛性の同時制御では,駆動系の詳細な数理モデルの同定に成功し,トルクセンサを用いずに剛性制御を可能にした.その結果,高磁場環境での利用や軽量化も可能となることから,リハビリテーション医療への応用も期待されている.また,制御可能な関節剛性の範囲を可視化することに成功したことで,利用者に剛性の強弱を視覚的に伝えられるようになった.一連の研究成果に関して,担当学生が2022年計測自動制御学会制御部門奨励賞(技術分野)を受賞した.現在は,拮抗構造のアクチュエータを2つ繋げた2リンクアームの開発をすすめ,角度同時制御系を開発中である.これを用いて,人の力と情報のハイブリッドインタラクションを評価する. 合理性や非合理性をパラメータで調整可能な意思決定モデルにより,人の非合理的な意思決定の事例として,裁判記録にある殺人事件を数値例で扱えることを示した.本研究成果は,学祭研究の独自性が認められ,筆頭著者が電気通信普及財団テレコム学際研究学生賞を受賞した.現在は,非協調ゲームにおける人間らしさを表す数理モデルの導出および解析を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発した制御技術および意思決定モデルを拡張し,空気圧駆動系と人とのハイブリッドインタラクションをおこなうシステムを開発する.このシステムを対象に,ゲーム理論的モデリングをおこなうことで,インタラクションによる人の操作および意思決定に与える影響を定性的に調査する.そして,力の相互作用を記述する物理系と人間らしさを扱う意思決定科学を統合したシステム理論の構築を目指す.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により,出張の機会が減ったこと,および,謝金の発生する講演や研究指導等を依頼する機会がなかったため.
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