2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploratory research on new source of atmospheric reactive nitrogen focusing on marine nitrogen-fixing organisms
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21K19835
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮崎 雄三 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60376655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 光次 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (40283452)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 反応性窒素 / 海洋窒素固定 / アンモニア / 有機態窒素 / 大気エアロゾル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海水中で微生物が窒素分子を(栄養塩として利用可能な)反応性窒素へと変換するプロセスである窒素固定に着目し、海洋表層の窒素固定生物が大気反応性窒素の有意な放出源となり得るかを明らかにすることを目的としている。今年度は、人工海水(培地)を用いた窒素固定生物の培養-大気捕集システムの構築と実験条件の最適化を行った。人工海水での窒素固定生物の培養と大気捕集が可能な測定システムを恒温槽内に製作し、大気の吸引による培養容器(水槽)内の圧力変化が細胞増殖に与える影響や容器への負荷を調べた。培養容器約30Lの材質は、光合成のための光を照射するため透明かつ強度が大きく、測定への有機物の干渉がないアクリル製を予備実験により選定した。 この実験システムを使用し、窒素固定生物の中でトリコデスミウムを用いた室内培養-大気捕集実験を約2カ月間行った。恒温槽内に設置した人工海水中でトリコデスミウムを培養し、インパクタを用いて24時間毎の大気捕集を行った。インパクタにより粒子相と気相(酸性、アルカリ性)の反応性窒素(アンモニア/アンモニウム塩、有機態窒素、硝酸/硝酸塩等)成分を捕集・測定した。人工海水試料は24時間毎に採取し、溶存態窒素や溶存有機炭素濃度、及びクロロフィルa濃度を計算するための細胞内蛍光強度など微生物指標を測定した。約2か月間の培養期間において、トリコデスミウムの増殖期、減衰期を捉えることに成功し、特にアンモニアの大気放出が衰退期において顕著であることが観測された。同時測定したバクテリアの数も減衰期に増加していたことから、トリコデスミウム増殖に伴う滲出物である溶存窒素、溶存態有機炭素の分解が進み、揮発性の高いアンモニア/アンモニウム塩として大気中へ放出が増大したことが示唆された。同様の大気濃度増大は塩基性の有機態窒素(気相)でも観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
室内実験システムの構築・最適化を経て、海洋窒素固定生物の人工培養-大気捕集実験に成功し、「海洋表層の窒素固定生物は大気反応性窒素の有意な放出源となり得るか?」という問いに対して、アンモニアを中心とする大気放出を明確に示すデータを得ることができた。当初の研究計画について概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた実験データをさらに詳細に解析し、大気へ放出された粒子相(エアロゾル)および気相(酸性・塩基性)の反応性窒素濃度について、トリコデスミウムの現存量・活動度との因果関係についての考察を深め、大気への質量フラックスを計算する。窒素固定生物のうちトリコデスミウム以外にもクロコスフェラを用い、同様に人工海水での培養-大気捕集実験を行い、トリコデスミウムを用いた実験結果との相違点を検証する。 大気放出される反応性窒素の質量フラックスの変化、反応性窒素の組成や気相と粒子相の割合の変化を調べる。得られた結果により、窒素固定生物から生成され大気へ放出される反応性窒素の量・組成を決める支配要因を明らかにする。上記で得られる成果をまとめ、学会等及び論文誌で発表する。
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Research Products
(1 results)