2021 Fiscal Year Research-status Report
有害化学物質を識別する陽極・陰極ペア検出HPLCの創製-食の安全を確保するー
Project/Area Number |
21K19869
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
桑原 知彦 徳島大学, 技術支援部常三島技術部門, 技術員 (40645165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水口 仁志 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (30333991)
高柳 俊夫 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (50263554)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | HPLC-電気化学検出法 / 多段電極検出器 / トラックエッチ膜フィルター / スクリーニング検査 / 環境・食品分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,2枚のフィルター作用電極を直列配置した,HPLC-二重電極検出法を用いて,本法を実証するためのモデル物質として選定した種々のフェノール系化合物の検出挙動を系統的に調査した。第一電極を酸化反応が進行する電位,第二電極を還元反応が進行する電位に設定したところ,各物質の分子構造の違いに基づき,異なる検出挙動を示した。すなわち,カテコールは,その高い可逆性を反映し,第一電極で酸化電流ピーク,第二電極で還元電流ピークを示したのに対し,高電位の電解酸化にともない,不安定な物質を生成するレゾルシノールは,第一電極・第二電極ともに酸化電流ピークを示し,両者を識別することが可能だった。また,第一電極に対する第二電極の電気量の比(捕捉率)が,各物質の酸化還元反応の可逆性や分子構造を反映した,固有の値を示すことを実証した。次年度以降は,複数の陽極-陰極ペアを備えたHPLC-多段電極検出法に拡張することにより,モデル物質を用いた理論検証とクロマトグラムを理解するためのデータベース化をさらに進める。また,得られたデータベースを活用し,複雑な夾雑ピークを有する環境や食品中試料の分析において,特有の検出パターンに基づき,有害化学物質を識別する手法を提案する。以上より,本研究課題は,そもそも何が含まれているか分からない試料に対し,含有する薬剤に目途をつけるスクリーニング検査の開発に発展していくことが大いに期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,フィルター作用電極を2枚搭載したHPLC-二重電極検出法を用い,本法を実証するために選定した種々のフェノール系化合物の検出挙動を系統的に調査した。その結果,第一電極に対する第二電極の電気量の比(捕捉率)が,各物質の分子構造を反映した,固有の値を示すことを実証した。現段階で,可逆性の高いカテコールと,高電位の酸化により不安定な生成物を生じるレゾルシノールやカテキンで,ピークの識別が可能であることが明らかとなっている。以上より,当初の目的であったモデル物質を用いた理論検証とクロマトグラムを理解するためのデータベースが揃いつつあることから,計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,二重電極検出器を改良し,複数の陽極・陰極ペアを備えたHPLC-多段電極検出法を開発し,モデル物質を用いた理論検証ならびにデータベース化を進める。分析対象は,フェノール系化合物に加え,農薬や尿酸等のプリン誘導体,もしくはその類似化合物に拡張する。また,コーヒーやお茶等の食品試料の分析も実施し,複雑な夾雑ピークを有するクロマトグラムにおいて,特有の検出パターンに基づき,当該成分を識別する手法を提案する。食品試料の分析を進めていく上では,いくつかの課題が生じることが予想される。例えば,微量成分の分析において,ピークの分離もしくは感度に問題が生じた場合は,分析カラムや試料注入量,ならびに溶離液条件等を検討し,最適化することで対応する。
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Causes of Carryover |
今年度は,コロナ禍に伴い旅費の支出がなかったことと,分析用試薬類の新規購入がなかったため,次年度使用額が生じた。次年度以降は,本研究課題の成果発表のための旅費や成果投稿料および英文校閲,分析用試薬類の購入等に使用する予定である。
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