2023 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト末梢神経系のin vitro再構成系の構築による痛み緩和メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K19927
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡 浩太郎 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (10276412)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 歯髄幹細胞分化 / ケラチノサイトと神経細胞の共培養 / 末梢での痛み緩和メカニズムの解明 / オキシトシン / ATP / オートクライン |
Outline of Annual Research Achievements |
歯髄幹細胞から末梢神経細胞を誘導することを引き続き検討すると共に、この神経細胞に分化させた歯髄幹細胞と皮膚ケラチノサイトの共培養についても検討を進めた。神経様に分化誘導した幹細胞の代わりに、性状が既知のラット胎児から摘出した後根神経節(DRG)神経細胞とケラチノサイト共培養系を構築し、蛍光イメージング法を用いて末梢での痛み刺激の伝搬メカニズムについても調べた。 ケラチノサイトからDRG神経細胞にはATPによる痛みシグナル伝達が行われており、これはオキシトシン(OT)により緩和されることがわかってきている。このOTによる鎮痛作用はこれまで中枢神経系について主に行動実験から検証されてきたが、末梢組織での鎮痛作用やメカニズムは従来解明されていなかった。本年度の研究から、ケラチノサイトとDRG神経細胞でOT放出は確認され、痛み伝達において2段階の鎮痛作用があることがわかった。1段階目は、様々な刺激を受容したケラチノサイトは強い刺激のみに応答し、OTによるオートクラインで刺激感受性を下げる。また2段階目では、ケラチノサイトから強い刺激のみを伝達されたDRG細胞で刺激強度依存的にOTを放出し、オートクラインで刺激強度を下げた。この2段階の応答により、危険が高い強い刺激のみを痛みとして中枢に伝達し、その刺激応答を抑え、痛みを緩和していると考えた。 今回の研究を通じて、1)歯髄幹細胞から末梢神経細胞様に分化誘導が可能であることをマーカータンパク質の抗体染色とカルシウムイメージングを利用して明らかにすることに成功し、2)神経細胞形態をより神経細胞らしくするための培養条件を見出した。また本年度は3)既知の神経細胞とケラチノサイトの共培養と痛み機能イメージングに成功した。これらを統合することで、ヒト歯髄幹細胞から分化誘導した末梢様神経細胞による痛み緩和のための研究基盤を整備することができた。
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