2022 Fiscal Year Annual Research Report
Chopin's organology: focusing on the relationship between four Ballades and Pleyel's instruments
Project/Area Number |
21K19941
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 梨沙 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (80909846)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | ショパン / プレイエル / エラール / 音楽博物館 / ショパン国際ピリオド楽器コンクール / シングルエスケープメント / バラード |
Outline of Annual Research Achievements |
2022(令和4)年度は特にパリの音楽博物館を見学し、同館の企画にも参加することで、1700年代末から1850年代頃までのフォルテピアノについての演奏を聴き比べ、また奏者や楽器専門家たちの話も聞くことができた。 これまで申請者は、このテーマへの問題意識を持たせてくれたワルシャワのショパン国際ピリオド楽器コンクールを中心に見てきていたが、その結果「ショパンが生涯で使用したピアノ=ショパン研究所が集めたピアノ」の視点しか持ち合わせていなかったことに、パリで気づかされた。つまり、ショパンは後半生の約20年でパリのピアノを使用するようになったわけで、前半生の約20年は当然ながらポーランドのピアノを使用していた。このポーランドにあったピアノは、フランス側にしてみれば系譜の異なる "Ecole germanique"(グラーフ、ブッフホルツなどゲルマン系)で、1830年代頃から様々に改良を重ね躍進したエラール等フランスの楽器メーカーにとっては「旧式」「保守」の印象が強い楽器である。もちろんウィーン式が旧式なのはすでにわかっていた話だが、問題は、そうした楽器を使い慣れた状態でパリに来たショパンが、どんなにピアノの発展を目の当たりにしても、プレイエルのようにシングルエスケープメントを保持し続ける楽器の方が、自分の打鍵感覚に「馴染む」と感じた可能性があるということである。 博物館にあった1844年製エラールと、ショパンが所有した1839年製プレイエルを聴き比べた。確かにエラールのダブルエスケープメントは速く何重にも音が出るが、その分騒がしい印象も強く、加えてピアノの音自体がより鋭い。他方でプレイエルはころころと丸い音で、一音一音の魅力がはっきり主張される。本課題で注目している「同音連打」でも、スピードよりも一つ一つの和音にショパンが重要性を置いた可能性があることをあらためて実感できた。
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