2022 Fiscal Year Research-status Report
債務引受制度における併存的債務引受の位置づけー免責的債務引受との関係を中心にー
Project/Area Number |
21K20093
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大橋 エミ 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 講師 (20909717)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 債務引受 / 併存的債務引受 / 免責的債務引受 / 特定承継 / 債務の負担 / 債務の設定 / 保証 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、債務引受という法制度全体の中で免責的債務引受と併存的債務引受の両法制度の関係をどのように整理することができるのか、という点を明らかにすることにある。この両債務引受概念は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ドイツから我が国へと導入さたものである。 2022年度は、ドイツにおける併存的債務引受概念の生成について明らかにすることを目的として、19世紀後半から20前半にかけてのドイツにおける同概念に関する文献を収集したうえで、併存的債務引受は免責的債務引受の対概念として位置付けることができるのか、という視点からこれらの文献を分析・検討し、研究会において報告を行った。ここでの報告内容については、営業譲渡と併存的債務引受の関連性についての分析・検討を踏まえたうえで、2023年度に論文として公表する予定である。 上記のように、我が国における債務引受制度の議論は、ドイツにおける同概念の承継をその出発点とする。したがって、我が国における両債務引受の関係を検討するにあたっては、同概念に関する比較法的検討だけでなく、当時の日本民法学の方向性についても整理する必要があるといえる。日本においては、1890年代以降、多くの若い法学者がドイツでの在外研究を行っており、彼らのドイツでの修学は、我が国における民法解釈にも大きな影響を与えていたと考えられるからである。この点に関しては、ドイツ人の視点に立って執筆された鳩山秀夫研究を翻訳する形で、研究成果として公表することができた((翻訳)大橋エミ「鳩山秀夫――20世紀初頭のボン大学における法学徒」法の思想と歴史第3号(2023年3月)99頁以下)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、2021年度に渡独し、ドイツ国立図書館や大学等に所蔵されている19世紀から20世紀初頭の債務引受に関連するドイツ法文献を収集する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴う渡航制限が継続していたため、当初予定していた資料収集については、2022年度に行った。そのため、【研究実績の概要】において示したように、営業譲渡と併存的債務引受の関連性についての考察を十分に行うことができなかった。 本研究に関する資料については、その大部分の収集をすでに終えているため、2023年度は、それらの分析・考察を中心に研究を遂行し、本研究の目的である併存的債務引受という法制度の生成史を明らかにすることが可能であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
【研究実績の概要】及び【現在までの進捗状況】で示したように、2023年度は、営業譲渡と併存的債務引受の関係について、ドイツ法の文献を分析・考察する。さらに、これまで検討してきた保証等の法制度と併存的債務引受制度の実務上の相違について、より詳細な検討を加える。これらの考察を通じて得られた成果については、研究会で報告し、ドイツ人研究者との意見交換も行いながら批判的に検討したうえで、論文としての公表を予定している。
|
Causes of Carryover |
当初の予定では、2021年度には資料収集を目的として、2022年度には研究内容に関するドイツ人研究者との意見交換及びドイツにおける最新の議論状況の把握をを目的として渡独する予定であった。ところが、【現在までの進捗状況】において示したように、新型コロナウイルスの感染拡大により、当初の予定通りに渡独することができなかった。また、当初購入予定であったコンメンタールや書籍の刊行が延期され、新型コロナウイルスの感染拡大が影響してドイツの出版社への図書の発注それ自体に関しても、予定通り行うことができなかった。そのため、次年度使用額が生じることとなった。 2023年度分については、2022年度請求分と合わせて、以下の費用のために使用する予定である。すなわち、①2022年度に予定していた目的での渡独、②必要図書等の購入、③昨年度に引き続きデータベース契約の費用に使用する。
|