2021 Fiscal Year Research-status Report
調停・仲裁、および提携契約期間が交渉結果に及ぼす影響の理論的分析
Project/Area Number |
21K20167
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
花登 駿介 大阪経済大学, 経済学部, 講師 (20906226)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 交渉 / 仲裁 / 不確実性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では交渉のプロセスをゲーム理論でモデル化し、どのような交渉結果が実現するのかを分析している。特に、本研究では調停・仲裁を用いた労使交渉や事業提携の交渉を分析し、交渉における適切な戦略や交渉方法の適切なルール(制度)についての新たな指針を与えることが目的である。 本年度の研究では、交渉当事者が協力することで将来得られる利益の大きさについて、交渉時点では利益の大きさがどの程度になるかが不確実である状況を考察した。さらに、その状況において仲裁制度が交渉結果にどのような影響を及ぼすのかという点について分析している。労使交渉や企業同士での交渉では、将来得られる利益の大きさがどの程度になるか交渉時点では確証がない場合が多い。したがって、利益の大きさが不確実なモデルを分析することで、現実の交渉状況をより詳細に考察できるという点に意義がある。特に、不確実性がある状況における仲裁制度についての研究は新しく、本研究は仲裁制度の効果や影響を新たな観点で分析しているという点で重要であると考える。 分析では新たに交渉のモデルを構築し、均衡点の導出を進めた。本研究のモデルでは、将来的に得られる利益の大きさが「大きい」可能性と「小さい」可能性がある。各交渉者は将来的な利益の大きさについて確証がない状態で、自身の利益配分の要求を行う。互いの要求が両立可能であれば交渉は合意に至る。一方、両立不可能であれば、その際には仲裁者が配分を決める。 現在、モデルの分析を進めている最中であるが、結果としては以下のことが予想される。利益の大きさに関する不確実性が大きい場合、すなわち「大きい」か「小さい」かについてほとんど確証が持てない場合、仲裁が用いられる可能性が高くなると予想される。したがって、仲裁は不確実性が大きい交渉の解決策としての役割があると示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、労使交渉や事業提携の交渉などにおける調停や仲裁の役割を分析することである。現在の進捗状況として、この目的に沿った理論モデルの構築および分析が行えている。さらに、今後の研究を進めていくにあたって、現在考えているモデルには十分な拡張性があることが予想される。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、研究実績の概要に示したモデルの均衡点を導出し、仲裁の役割の分析を進める。さらに、可能であれば現在のモデルを拡張し、より詳細な分析を行う。 現在の進捗状況では、将来得られる利益の大きさが「大きい」か「小さい」かの2つのパターンのみの状況を考えている。しかし、現実には2つのパターンだけではなく、将来的な利益の大きさは様々になる可能性がある。そのため、パターンが3つ以上のモデルを構築することで、より現実の交渉状況に近いモデルになり、より詳細な分析が可能になると考えられる。 最終的には本研究をワーキングペーパーとしてまとめ、査読付き国際論文誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、コロナ禍により対面で学会に参加する機会がなく、旅費分を使用しなかったためである。 次年度の使用計画としても旅費を予定している。可能であれば対面での学会参加の機会をなるべく増やし、本研究の報告や関連研究の情報収集を行う。対面での学会参加が難しい場合、分析の効率化に必要な科学技術的計算ソフトウェアの購入費に充てる予定である。
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