2023 Fiscal Year Research-status Report
Research of consumers' price perception based on micro-dynamic pricing
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21K20169
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
宮津 和弘 専修大学, ネットワーク情報学部, 教授 (20907208)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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Keywords | ダイナミックプライシング / データサイエンス / ベイジアンモデリング / マーケティングサイエンス / ID-POSデータ / 知覚価格 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイナミックプライシングは、米国において1970年代からホテルおよび航空業界におけるレベニューマネジメントとして実践されている.未利用のホテル客室や航空機座席による機会損失を最低限とするために、消費者需要、供給能力、競合他社による提供価格、季節性などの様々な要因にもとづいて、商品価格を継続的に調整する.ダイナミックプライシングは、在庫として繰り越せない商品やサービスであれば対象となり得るものであり、米国ではスポーツや音楽イベントの座席にダイナミックプライシングを適用して商用販売している.近年では、オンラインショッピングの普及から、一般消費財に対してもダイナミックプライシングが適用されている。さらに、ダイナミックプライシングの問題は、チャネルごとの最適価格に留まらず、消費者個人に対する最適価格として、価格のパーソナル化問題として拡張している.海外では、Uberなどの交通サービスの提供において、利用状況に応じて個人ごとに異なる価格を提供している.また、ネット販売される旅行パッケージの割引率がブラウザごとに若干率が異なることを感じることも否めない.このように、ダイナミックプライシングは、商品やサービスに対して全体を包括する全体モデルから、消費者ごとの消費者モデル、販売チャネルごとのチャネルモデル、そして消費者および販売チャネルの双方で異なる価格を提示する消費者チャネルモデルへと発展することが期待される.本研究の目的は、このようなデジタル化社会において、一般消費財に対する最適商品価格のパーソナル化を販売チャネルにまで拡張し、消費者とチャネルの異質性を取り込んだダイナミックプライシングの体系を示し、ダイナミックプライシングに基づく価格戦略を提示することである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、まず国内外のサーベイ研究から開始してデータサイエンスにおけるダイナミックプライシングのアプローチに関して整理した.特に、ホテル客室や航空機座席などの従来サービスに対するダイナミックプライシングに限らず、一般消費財に対する研究事例を学術論文と併せて、実際のデジタルビジネスの実例に関して調査し、ダイナミックプライシングのパーソナル化について方向性を探求した.同時に、マーケティングサイエンス領域における価格戦略についても追求した結果、ネステッドロジットモデルと階層ベイズを融合した数理モデルから消費者ごとにダイナミックプライシングさせるフレームワークが提案した.次に、実証分析するために適切な一般消費財を選択し、ID-POSデータ提供企業からコロナ禍以前の購買履歴データを提供して頂き、いくつかの商品に対するダイナミックプライシングのパーソナル化を試みた.具体的には、2019/1/2~12/31期間における74店舗569人の消費者の購買履歴データを用いて、各消費者に対するトマトケチャップ(KAGOME500G)の最適価格を算出し、従来の価格戦略と比較して10%程度の売上増加が期待できるという示唆を得た.本研究結果を国内外で研究発表し、産業界からの参加者の一部からは実務での活用に関して関心を提示された.一方で、消費者異質性だけでなく、店舗異質性など、どの範囲を同質および異質と想定するかによってフレームワークが異なるため、店舗ごとのダイナミックプライシングを含めた全体フレームワークをまとめた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方として、本研究で構築したダイナミックプライシングのフレームワークをID-POSデータを提供して頂いた企業と協議して、2-3週間に限定した実証検証ができないか検討する.一方で、実店舗でダイナミックプライシングさせるとなるとオペレーション上の負荷も課されるため注意が必要である.まずは、店舗ごとのダイナミックプライシングモデルを新たに構築して、店舗ごとPOSデータを用いてパラメータ推定した結果をもとに、小売業者とも協力しながら実験店舗を選定して、研究成果の実務への応用を検証していきたと考える.さらに、ダイナミックプライシングのパーソナル化は実店舗よりもオンラインショップでの実施が現実的と考えられるため、商品やサービスの対象をオンラインに限定して、パーソナル化の可能性を検証していくつもりである. これまで、ダイナミックプライシングのフレームワークは数理モデルを基調としたアプローチであったが、実際には機械学習によるアプローチも可能である.特に、ニューラルネットワークを利用したダイナミックプライシングの研究事例もあることから、消費者レベルおよび店舗レベルのダイナミックプライシングをニューラルネットワークで推定することを試みる.既に、数理モデルで実施した推定結果を得ているため、それら推定結果と比較検討しながら機械学習によるフレームワークの妥当性を検討する.また、購買の規模が大きくなった場合には、消費者および店舗の異質性を考慮した最も詳細なレベルにおけるダイナックプライシングモデルの構築も可能となる.この場合、さらに詳細な価格調整が可能となるため、商品売上は従来の価格戦略より増加することが予想される.そして、異質性の取込み方、およびモデリングアプローチを総合的に考慮したダイナミックプライシングを大枠で理論と実証の観点からまとめたい.
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Causes of Carryover |
コロナ禍に交付された本研究費であるが、学会や研究集会等が延期またはキャンセルされたこともあり、当初は発表や議論の場が限定的であった.2023年度からは本格的に研究交流も再開され、本研究もID-POSデータ提供企業とのディスカッションも活発化されたことで前進した.しかしながら、当初の遅れを取り戻すには至らず、昨年度予定していた学会発表を断念して今年度に延期した.今年度は、繰越した研究費は新たな成果発表のための学会報告活動に支出する予定である.
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