2022 Fiscal Year Annual Research Report
親子間の支援関係と社会的不平等・格差の連鎖に関する総合的研究
Project/Area Number |
21K20175
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
俣野 美咲 東京大学, 社会科学研究所, 特任助教 (00908345)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 社会的不平等 / 格差 / ライフコース / 親子関係 / 世代間支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、人々のライフコースにおいて社会的不平等・格差が形成されるメカニズムを、 複数世代の親子関係に着目して明らかにすることにある。具体的には、祖父母(G1)・親(G2)・子(G3)の三世代での支援の授受によって、子のライフコースにおける格差・不平等がいかに形成されるかを大規模縦断データの計量分析によって検討した。分析に使用したデータは、東京大学社会科学研究所パネル調査プロジェクトによる「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」、「親子関係についての人生振り返り調査」のデータである。 研究期間全体を通じて得られた成果は以下の2点にまとめられ、2022年度はとくに第2の点について研究を実施した。第1に、G2がG3に及ぼす影響について、G2からG3への経済的および非経済的支援は、G3の離家、結婚、第1子出生の経験を促進する。その一方で、G3からG2への経済的および非経済的支援はこれらのライフイベントの経験を抑制することが分析から示された。このことから、「G2から支援を受けられるか否か」「G2に支援をしているか否か」という親子関係のあり方によって、G3のライフイベントの経験の機会に格差が存在することが明らかになった。 第2に、G1がG3に及ぼす影響について、G1からG2への経済的支援があると、G2はG3へより多額の教育投資をする傾向にあることが示された。さらにこの傾向は、G2の世帯収入が高いほど顕著にみられた。一方で、G2がG1に経済的あるいは非経済的支援をおこなうことは、G2からG3への支援に影響を及ぼさない。ただしこの点については、G2からG1への支援(介護や生活費の援助など)が本格化する年齢層を含めた分析によって再検討する余地がある。これらのことから、G1からの支援によって、G3の教育機会の格差が助長されることが示唆された。
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Research Products
(4 results)