2021 Fiscal Year Research-status Report
自傷行為の維持メカニズムに基づく経時的自殺リスクアセスメントの体系化
Project/Area Number |
21K20301
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
飯島 有哉 富山大学, 学術研究部人文科学系, 講師 (90909714)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 自傷行為 / 自殺リスク / アセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
自傷行為には多様な状態像が存在することが知られており,その維持メカニズムによっても自傷行為者が有する自殺リスクは異なるとされている。本研究は,自傷行為の維持メカニズムおよび自殺リスクの症状経過に応じた経時的な変化プロセスについて検討し,自傷行為者が有する自殺リスクアセスメントの体系化に貢献することを目的としている。 この目的を達成するために,2021年度は自傷行為者の状態像の変化プロセスに関する仮説モデルの生成を試みた。自傷行為の経験がある者を対象としたインタビュー調査を実施しデータの分析を行なった結果,自傷行為の維持要因に関して,1)初めて自傷行為を行う際に期待していた効果には自傷行為に関する知識に応じた個人差がみられること,2)初期の自傷行為は主に嫌悪感情の減弱という負の強化によって維持されること,3)数回程度以内の反復のうちに傷跡を得ることによる種々の正の強化に基づく維持要因が付加されることが示唆された。したがって,傷跡が残る自傷行為かどうかという点によっても,維持要因の重複のしやすさや寛解の難しさという観点から,自傷行為者が有する自殺リスクは異なる可能性があるといえる。 また,2020年に児童生徒の自殺者数が過去最多となったことから,新型コロナウイルス感染症の流行に伴う児童生徒のメンタルヘルス悪化や自殺リスクについて,生徒を対象とした調査を実施しその要因と個人差を分析し文献にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,自傷行為の維持メカニズムの変化プロセスに関する仮説モデルの生成を実施し,次年度実施予定の調査準備を整えられたため。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,自傷行為者が有する自殺リスクのアセスメントツールの選定・開発を行う。そのうえで,自傷行為の維持メカニズムに基づく自傷行為者の状態像および自殺リスクの経時的変化について縦断調査を実施し検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行の遷延化に伴い,年度内に予定されていた学会参加のための出張や調査会社を利用した調査の実施を延期せざるを得なかったため。社会情勢を踏まえ適切な時期に当初の計画に基づいた用途での執行を予定している。
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