2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K20324
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
日下部 佑太 京都大学, 理学研究科, 助教 (60913861)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 岡の原理 / 岡多様体 / Stein多様体 / 楕円性 / Levi問題 / 擬凸性 / 擬凹性 / 正則写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、岡の原理の様々な幾何学的側面を解明することにより多変数関数論及び幾何学双方の発展を促すことであった。解明すべき幾何学的側面の中でも、複素多様体内の領域の岡性と境界の幾何学的性質の関係が特に重要であった。この問題は、多変数関数論におけるかつての中心的問題であるLevi問題の双対版であり、双対Levi問題と呼ばれるべき新しい型の問題である。領域のStein性と境界の擬凸性の関係を問うLevi問題とは双対的に、この双対Levi問題では領域の岡性は境界の擬凹性と深く関わると期待されている。 本年度の研究ではこの問題に取り組み、Gromovによって導入された楕円性と呼ばれる岡性よりも真に強い条件を満たす領域について境界の幾何学的側面を調べた。このように岡性よりも真に強い条件を課した領域を考えると、岡領域と比べて境界がさらに強い擬凹性を持つと期待するのが自然である。しかし本年度の研究の成果として、楕円領域の境界は擬凹性ではなくむしろ擬凸性を持つということが判明した。この結果は、Andrist-Shcherbina-WoldによるStein多様体内のコンパクト正則凸集合の補空間の非楕円性の証明を改良することで得られるものであり、Andrist-Shcherbina-Woldの定理の一般化も与える。さらにこれは、複素多様体がSteinかつ岡ならば楕円的であるというGromovの定理の逆方向の結果を与えていると見ることもできる。 本年度の研究で判明した事実から楕円領域の境界がLevi平坦面に近い性質を持つことが予想できるため、今後は楕円領域の研究を通して多変数関数論とCR幾何学双方の発展が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
擬凹性との関係が期待される岡性よりも真に強い条件を満たす領域の境界の幾何学的側面を研究することで、本研究の最重要課題の一つである双対Levi問題に関して良い意味で期待を裏切る擬凸性の結果が得られた。 また本来の問題である岡性と擬凹性の関係についての研究も、滑らかな境界を持つ岡領域の擬凹性に関するForstneric-Ritterの結果を任意の岡領域へ一般化できることなどが判明しており着実に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの研究で得られた結果を改良することで、楕円領域のより強い擬凸性や岡領域のより強い擬凹性を解明することに注力する。 この方向では、複素射影平面内のLevi平坦面の非存在予想などを通して多変数関数論とCR幾何学双方の発展を促すよう意識して研究を進める。 また、岡領域の境界の幾何学的性質を用いて岡領域自身の新たな微分幾何学的側面や代数幾何学的側面を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国内外問わずほとんどの研究集会やセミナーがオンライン開催もしくは中止になったことや国外の研究者の元に滞在することが不可能であったことにより、本来必要になるはずであった旅費を使用する機会が無かったことが次年度使用額が生じた主な理由である。 次年度は様々な研究集会やセミナーが対面開催する予定となっているため、この次年度使用額を活用して国内外問わず多くの研究集会などに参加することで幅広い分野の研究者たちと議論を重ねようと計画している。特に岡多様体論で最も重要な研究者であるForstnericの元に滞在もしくは招聘することで、双対Levi問題に関する研究のさらなる洗練を目指す。
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Research Products
(4 results)