2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K20334
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
小田部 秀介 東京電機大学, 工学部, 助教 (40907862)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 不分岐コホモロジー / 対数的Hodge-Wittコホモロジー / Chow群 / 移送付きNisnevich層 / 正標数 / 固有非特異代数多様体 / 有理性問題 / ホモトピー不変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は, 本研究課題採択以前に不分岐コホモロジーに関する共同研究によって得られた成果に関する共著論文の執筆・投稿,および研究集会やセミナーにおける研究成果の報告が主な研究活動となった. 当該共著論文はジャーナルForum of Mathematics, Sigmaに受理され, 既に出版済みである. その内容は, 正標数の体上定義された固有非特異代数多様体が,普遍的自明なゼロサイクルのなすChow群を持つならば,その不分岐対数的Hodge-Wittコホモロジーも自明である,という結果を帰結として含んでいる. 正標数の有限連結群スキームに対する有理性問題にアプローチする際に,不分岐対数的Hodge-Wittコホモロジーの解析が重要であると考えているが,今回得た成果はその代数幾何的側面について整理する内容と言える. 実際は,より一般にP1不変な移送付きNisnevich層に対しても同じ結論が成立することまで示せており,固有非特異代数多様体に対してはある程度状況を明らかにすることができたと考えている. Noether問題やLurothの問題の反例の構成の際にはA1ホモトピー不変なコホモロジー理論が用いられることが主流であると認識していたが,比較的最近,国外の専門家らによってホモトピー不変ではないコホモロジーを用いてLuroth問題の新たな反例が提供されている. こうした成功例が既にあるので今回得た結果についても有理性問題への応用が期待できると考えている.上述の共同研究に加えて,不分岐対数的Hodge-Wittコホモロジーの自明性については,cycle module理論の側面からもアプローチを試みており,こちらについては採択以前に論文として執筆済みではあったが,本年度改訂を重ね, ジャーナルmanuscripta mathematicaに受理された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
不分岐コホモロジーについて,上述の共同研究の機会を得たことが大きな助けとなって,本研究課題の着想に至った当初は想定していなかった成果が得られ,その点では期待以上に理解が大きく進んだと言える.しかし,一方では,元々目標に掲げていた有限群スキームの有理性問題に関しては進捗は遅れていると言わざるを得ない. 本年度得た結果については, 適用できる対象が固有非特異代数多様体に制限されており, 群スキームの分類空間に対しては直接的には応用できない. また反例の構成という方向では固有非特異代数多様体に対しても十分に議論ができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得た結果を実際に有理性問題に応用する方向で議論を進めていきたい.固有代数多様体に対しては先行研究を足がかりにして研究を進める.有限群スキームに対しては,その不分岐コホモロジーの解析や分類空間の有理性との関係の整理など,基礎理論の整備に努める.
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Causes of Carryover |
着任1年目ということもあり,授業準備に多くの時間が取られ,研究を計画通り進めることができなかった.そのため研究討議の見通しも立たず,そのための旅費としての支出がなかった.またコロナ禍ということもあり,現地参加可の研究集会であっても講演者でない限りは現地での参加を控え,オンラインで参加するなどしたため,研究集会への出張のための旅費の支出もなかったため.特に学期中は教育の負担が大きく,研究との両立に苦戦したことも出張を躊躇った要因である.
次年度は特に12月頃京都で開催される研究集会「代数的整数論とその周辺」へ参加をしたいと考えている. そのための旅費として支出をする. 整数論サマースクールも夏に開催されるので,どのような形態になるかはまだアナウンスがないが,それへの参加の旅費として支出が考えられる. 教育と研究との両立を図っていきたい.基金の返還や研究期間の延長も検討しなければならない.
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