2021 Fiscal Year Research-status Report
計数時系列解析における分散不均一モデルからの新展開
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21K20338
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
後藤 佑一 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (90907073)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 計数時系列 / 分散不均一性 / M-推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
ARMA-GARCHモデルに対応する計数時系列モデルとして、INGARCHモデルの条件付き分散に自己回帰構造を入れたモデルを提案した。具体例として、Heinen (2003)で提案されたdouble Poisson分布を考えている。提案モデルの未知母数の推定は次の2段階推定で行える。まず、条件付き期待値に含まれる未知パラメータはM-推定法で推定する。その後、条件付き分散のみに含まれる未知パラメータは、条件付き期待値に含まれるパラメータに上で推定したM-推定量を挿入してから最小二乗法を適用することで推定する。このように構成したパラメータの推定量の強一致性と漸近正規性を証明することが出来た。また、無限分散を持つ計数時系列に対する推定及び検定理論も完成しつつある。 さらに、4か国間の国際共著を含む次の5本の論文を国際誌へ投稿した:(1)高次元時系列に対するスパース主成分分析、(2)長期記憶性を持つ計数時系列を用いた感染症感染者数のモデリング、(3)分布を特徴づける新しいスペクトルに対する統計理論、(4、5)時系列データに対する固定効果及びランダム効果の存在の検定。 時系列データに対する固定効果及びランダム効果の存在の検定の概要を述べる。Nagahata and Taniguchi (2018)では群間独立を仮定していたが、株価データを含む多くの時系列データではこれを満たさない。そこで、群間相関を許した枠組みを考え、統計量が漸近的にdistribution-freeになるように既存の統計量を拡張した。その統計量を用いて、固有効果及びランダム効果の存在の検定を構築した。漸近サイズがαであること、一致性、近接対立仮説の下での検出力を明らかにした。これらの内容を国内学会及び国際学会で発表した。本研究は、計数時系列に対する分散分析理論の研究にも応用することが出来ると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
評価の主な理由として、INGARCHモデルの条件付き分散に自己回帰構造を入れたモデルのパラメータの推定量の強一致性と漸近正規性を示すことが出来たという点が挙げられる。提案推定量の強一致性と漸近正規性は、プロジェクトの開始から半年で遂行するように計画を立てていた。これらの性質は、変化点検出や適合度検定問題を考える際に利用出来るため、次年度の研究内容の基礎となっている。これに加えて、無限分散を持つ計数時系列に対するパラメータ推定理論及び検定理論も完成しつつあることや5本の論文を国際誌へ投稿したことを加味して「おおむね順調に進展している」という評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
提案推定量の漸近分散が複雑であるので、有限標本の下で精度の高い信頼区間や検定を構築する際にはbootstrap法を用いる必要がある。これまで、一般的な枠組みで研究を進めてきており、具体例ではdouble Poisson 分布を用いる予定である。しかし、double Poisson 分布の期待値や分散は近似値でしか与えられていないため、代用可能な分布がないか調査する。また、提案モデルの定常性やエルゴード性についても来年度の課題とする。すでに得られた結果を基礎にして、変化点検出や適合度検定問題にも取り組む予定である。
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Research Products
(10 results)