2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K20612
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松郷 宙倫 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (40907408)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | アデノウイルス / 獣医学 / ベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、これまでにイヌアデノウイルス2型(CAdV2)がウイルスの増殖性に関わる新規タンパク質Xをコードしていることを明らかにしたが、その機能は不明であり、本研究ではその機能、分子機構の解明を目的とした。今年度は、Xの機能解明および他のアデノウイルスにおいても保存されているかの検討を行った。X欠損CAdV2と野生型CAdV2の細胞内と細胞外のウイルス力価を比較した結果、細胞外のウイルス力価の差は細胞内のウイルス力価の差より大きく、Xはウイルスの細胞外への放出に関わる可能性が示唆された。また、Xがウイルス粒子に取り込まれるか否かについて検討するために、ウイルス粒子を精製し、ウェスタンブロッティングにより解析した結果、Xはウイルス粒子には取り込まれない非構造タンパク質であることがわかった。 Xがウイルスの増殖性を上昇させる分子機構を解明するために、野生型CAdV2感染細胞およびX欠損CAdV2感染細胞を用いて共免疫沈降を行い、Xと相互作用する宿主因子やウイルスタンパク質の同定を試みた。しかし、非特異的な結合が多く、相互作用する因子の同定には至らなかった。 また、他のマストアデノウイルスにおいてもXが保存されているか調べるために、CAdV2に近縁なCAdV1およびコウモリアデノウイルス(BtAdV)に変異を導入し、作製した組換えウイルスの増殖性を比較した。X欠損CAdV1は野生型CAdV1に比べ、増殖性が低下し、またX過剰発現BtAdVは野生型BtAdVに比べ増殖性が上昇した。これらの結果からCAdV1、BtAdVにおいてもXは機能的に保存されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はXがウイルスの細胞外への放出に関わること、非構造タンパク質であることを明らかにし、Xの詳細な機能を解明する上で重要な知見を得ることができた。さらに、XはCAdV2のみならず、CAdV1やBtAdVにおいても保存されていることが明らかとなった。一方で、共免疫沈降法ではXと相互作用する宿主因子やウイルスタンパク質の候補を見つけることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
共免疫沈降法ではXと相互作用する宿主因子の同定は困難であったため、イーストツーハイブリッド法に変更し、引き続き同定を試みる。その後、同定した宿主因子や関連遺伝子のノックアウトを行い、ウイルスの増殖性を評価し、XによってCAdV2の増殖性が上昇する詳細な分子機構を明らかにする。また、ヒトアデノウイルスにおいてもXが発現しているか解析する。
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Causes of Carryover |
共免疫沈降法によってXと結合する候補タンパク質の同定とその解析を行う予定であったが、共免疫沈降法では結合する因子を同定できず、予定していた解析は次年度に持ち越すこととなったため。 また、研究代表者が新年度より機関を異動することになり、それに伴い、時間的な制約が生じたため。 次年度使用額については、イーストツーハイブリッド法によるXタンパク質と結合する宿主因子の同定および詳細な分子機構の解明に用いる予定である。
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