2021 Fiscal Year Research-status Report
神経磁場を直接捉え機能的結合を計測可能とする低磁場fMRIへの挑戦
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21K20689
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 博之 京都大学, 工学研究科, 助教 (20909808)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 低磁場fMRI / ノイズ低減 / fMRI / spin-lock |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度における計画目標は、MR画像における信号対雑音比(SNR)を改善することで、低磁場MRIにおいてもヒトの神経磁場の計測可能性を示すことにある。これを実現するためにDenoising convolutional neural network (DnCNN)を用いてノイズ低減を試みたがSNRが低い場合、有効性が低いことが分かった。これはMRIの輝度分布がRice分布に従っており、SNRの大小で輝度分布の形状が異なるため、高磁場MRIを用いた先行研究と異なる結果を得ることとなった。 そこで、ノイズ低減に関して2つのアプローチを行った。1つ目はRice分布に基づく輝度値の推定である。高磁場MRIでは加算平均がこれに相当するが、低磁場MRIでは輝度分布が異なるため同じ有効性が保証されるわけではない。そこでKoayの推定法を用いてMR強度の推定を行ったが、0.3-T MRIにおけるファントム画像では加算平均に対するKoayの推定法の優位性を確認できなかった。また、この手法には適用条件があり、汎用性に課題があった。そこで2つ目のアプローチとして、MRの信号取得空間であるk空間において信号値はGauss分布に従うことから、画像再構成とノイズ低減を同時に行えるAUTOMAPという機械学習に着目した。現在はこの手法の有効性を確かめるために実装している段階にある。 この検討に加えてMR信号を大きく取り出す手法にも着目した。そこで、spin-locked oscillatory excitation (SLOE)での磁場検出限界を調査したが、stimulated echoの影響のためか、理論に反してspin-locked Mz (SL-Mz) よりも感度が劣る結果となった。 今後は、このノイズ低減を通じて磁場検出限界の向上を目指し、信号情報の再構成とヒト脳神経磁場の計測の実現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の計画目標は、MR画像における信号対雑音比(SNR)を改善することで、低磁場MRIにおいてもヒトの神経磁場の計測可能性を示すことである。まずDenoising convolutional neural network (DnCNN)を用いてノイズ低減を試みた。先行研究に倣いIXIデータセットにノイズを重畳し、劣化画像から元画像の復元を試みたがSNRが低い場合、有効的ではなかった。これはMRIの輝度分布がRice分布に従っており、SNRが十分に大きい場合にはGauss分布に近似できる一方で、低磁場MRIでは輝度分布の形状が異なるためであった。 そこで、ノイズ低減に関して2つの検討を行った。1つ目はRice分布に基づく輝度値の推定方法である。従来、MR画像の加算平均はGauss分布の平均の最尤推定に相当するため高磁場MRIでは有効的であったが、低磁場MRIではより効果的な推定方法があると考えた。そこでKoayの推定法を用いてMR信号の強度推定を行ったが、加算平均に対する優位性を確認できなかった。また、この手法には適用条件があり、汎用性に課題があった。2つ目の検討として、MR画像の信号取得空間であるk空間上で信号値はGauss分布することから、画像再構成とノイズ低減を同時に行えるAUTOMAPに着目した。現在はこの手法の有効性を確かめるために実装している段階にある。 また、ノイズ低減だけでなくMR信号を大きく取り出す手法にも着目した。そこでspin-locked oscillatory excitation (SLOE)での磁場検出限界を調査したが、stimulated echoの影響のためか理論に反してspin-locked Mz (SL-Mz) よりも感度が劣る結果となった。 以上より、MRの輝度分布の差異が原因で別のアプローチが必要となり、計画の進行が若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは現在取り組んでいる低磁場MRIにおけるノイズ低減を通じた磁場の検出限界を向上することに努める。現在着手しているAUTOMAPの有効性を確認するために、提唱論文に従って自然画像を用いて学習を行い、低磁場MR画像の輝度のばらつきを抑制することを目指す。AUTOMAPは信号取得空間(MRIではk空間)でのノイズを低減でき、k空間上ではノイズはGauss分布に従うため平均二乗誤差を用いて有効性を期待できる。SNRの改善を通じて検出限界がどれほど改善されるのか追究する。 また本研究課題の一つである計測対象信号の再構成方法の提案を目指す。申請者が導出した画像化シーケンス中におけるBloch方程式の厳密解は、spin-lockシーケンス中の磁化挙動の解析に応用でき、spin-lock磁場の不均一性を考慮できるようになる。この解析解をモデルとして、回帰を行うことで計測対象の信号の強度や位相などの情報の再構成を行う予定である。 最後に、検討したこれらの手法の有効性を検証するために、認知課題や視覚または聴覚の定常誘発反応課題を用いて神経磁場の計測を行う。0.3-T MRIにおいて機能計測を行うための設備が整っていないため、必要な装置を調達し低磁場MRIでの機能計測の成功例を報告することを目指す。また、現状では定常反応に関して有効性は期待できる一方で、瞬間的な神経磁場の変化には対応できるのか不明であるため、spin-lock周波数変調や実験パラダイムの改良により、解決に臨む。
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Causes of Carryover |
令和3年度において予算が余剰し令和4年度に繰り越す理由は、ノイズ低減に関する研究進捗が滞ったことにある。これに伴い研究活動を論文あるいは学会にて発表する機会を逃したことと、購入したワークステーションの拡張の方向性が定まらず購入すべきPC部品を決定できなかったためである。 令和4年では、AUTOMAPの予備検討次第ではあるが有効性が確認できればワークステーションの拡張方針が定まるため、随時必要部品を購入するために余剰金を用いる。加えて、本検討はspin-lockシーケンスの磁場検出限界向上のみならず低磁場・超低磁場MRIにおける画質向上に貢献できることから論文や学会などで広く周知することが望ましいため、その費用として用いる。
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