2022 Fiscal Year Research-status Report
戦時下の北京・上海及び周辺都市における日本語出版物と文芸文化ネットワークの研究
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21KK0007
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
大橋 毅彦 関西学院大学, 文学部, 教授 (60223921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 巧 立教大学, 文学部, 教授 (60253176)
中村 みどり 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (30434351)
木田 隆文 奈良大学, 文学部, 教授 (80440882)
多田 蔵人 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (70757608)
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Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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Keywords | 中国国家図書館 / 外地文学 / 文化交渉 / 日中文学資料 / 日本語文学 / 日本語雑誌 / 上海図書館 |
Outline of Annual Research Achievements |
本共同研究開始時に予定していた中国現地での資料調査収集がCovid-19により難しくなったので、それに代わる主要な研究活動として研究期間後半に予定していた国際学術集会を計画し、実施した。ワークショップの形をとった本集会のタイトルは「東アジアにおける日本近代文学の越境」。主催は海外研究協力者の王成が所属している清華大学外国言語学部、それに本共同研究チームが「在華日中文学資料研究会」の名称で共催する形をとり、11月20日にハイブリッド方式で約50名の参加者を得て開催した。プログラムは基調講演・第1部個別発表・第2部特集企画「よみがえる上海歴史文化空間―地理情報による資料保存と共有を目指して」というもので、本共同研究が始まってから1年経った時点での調査が進んだ文献資料の紹介や、研究の進展によって蓄積される文芸文化ネットワークに関連する各種データを活用していくための問題提起が為された。 全員で取り組んだこのワークショップと並行して、やはりオンライン形式で行ったチームのメンバーによる研究会では、海外研究協力者の秦剛から中国国家図書館所蔵の日本語雑誌『オール上海』をめぐっての報告があった他に、日本側メンバーの石川巧、木田隆文が中心となって実現した稀覯雑誌の復刻としては、『海国少年』と『上海文学』がそれぞれ挙げられる。また令和4年度には、海外研究協力者として北京外国語大学副教授の曲莉、上海外国語大学副教授の呂慧君の2名を新たに加え、立教大学大学院博士後期課程に在籍する牛路遥、王羽萌も本研究活動に常時参加、全体としてチーム内の世代間交流と、ワークショップ前後の活動上の機動力アップもはかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、北京の清華大学でハイブリッド方式で開催したワークショップや、視野を東アジア全域に広げて戦時下の上海や朝鮮で刊行された日本語雑誌の復刻を行うなどして、当初考えていた活動計画の一斑は4年半の研究期間中の3分の1を終えた時点でかなり実現してきている。加えて、今後の研究活動に資するところの大きい資料を所蔵しているアジア・アフリカ図書館(旧・中日文化研究所、東京都三鷹市)での資料閲覧も始めている。 だが、本共同研究活動における最重要課題である北京・上海での資料調査と収集が令和3年度に続いて、Covid-19の影響によって実現できなかった。また令和4年度に1回目の実施を予定していた米国議会図書館に赴いての資料調査と収集も、同様の理由で実施できなかった。これが区分(3)とした最大の理由である。北京での資料調査と収集は、北京在住の研究協力者があたってくれているのでかなりの成果はあがっているが、日本側のメンバーが現地で共に活動できなかった分、複眼的な視点から資料の分析にあたることができなかった。 また、オンラインでのワークショップやミーティングを通じて個々のメンバーの研究成果を共有し、それを外部に向けて発信することもある程度はできたが、やはりそこにもいくつかの面での制約が伴い、より深い形での識見交流が生じ、それが継続していくという段階にはまだ達していないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本共同研究開始以降Covid-19感染拡大の影響により実施できていなかった日本側研究者の北京、上海での資料調査と、現地での中国側研究協力者との直接交流、フィールドワークを行うことを優先課題とする。また、当初の計画では、令和5年度は調査地域・調査対象を北京、上海の周辺都市とそこにある図書館等にも広げることとしていたが、これまでの研究の蓄積によって、個々のメンバーの関心領域、研究課題は、確実にその方面での活動を必要としてきている。 そこで、米国議会図書館での調査については、同図書館所蔵資料に関するより徹底した情報収集をはかったうえで、その実施は令和6年度に回すこととし、令和5年度は北京班・上海班としての現地入り以外に、各自のスケジュールを調整して中国への個別調査の機会を増やすことにしたい。これに合わせて、中国側研究者も中国国内における長距離移動を伴う調査を積極的に行う。現時点で予定しているのは、北京、上海以外に、天津(天津図書館、平凡友好画院)、杭州(杭州図書館、浙江図書館、同孤山分館)、武漢(湖北省図書館)である。 以上と並行して、日本国内では令和4年度に続いて東洋文庫所蔵資料を精査するとともに、新たな対象となってきたアジア・アフリカ図書館の所蔵資料を活用、主として戦時上海で形成された人的・文化的ネットワークが戦後どのような様相を呈していくのかについて、新たな知見を得るように努める。さらに、令和4年度に実施したワークショップの成果を引き継ぐ形での第2回目の国際シンポジウム開催の準備に入る。
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Causes of Carryover |
令和4年度は中国・米国・日本国内での調査旅費の使用を予定していたが、Covid-19の影響により海外渡航による調査が実施できず、また中国の清華大学を会場として開催したワークショップも、日本側研究者は全員Zoomによるオンライン参加であったためにそこでの旅費も不要となり、次年度使用額が生じた。 令和5年度はようやく海外での調査が可能となるので、「今後の研究の推進方策」で記したように、グループならびに単独の双方の形態をとって、北京・上海・天津・杭州で資料調査にあたる機会を当初の計画より増やして旅費として使用する。 また、本共同研究にとって必要な図書購入費、現地での資料収集とその整理をアシストしてくれる方に支払われるべき人件費も、当初の予定より増えてくることが予想されるため、次年度使用額の一部をそちらの項目にもそれぞれ回して使用する。
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Remarks |
メディア掲載:木田隆文「上海文学」光と影の出版史(『日本経済新聞』2023年1月20日)・事典項目執筆:秦剛「北支那」「大陸」(『日本近代文学大事典 増補改訂デジタル版』・書評:劉妍「現代主義文学在東亜的越境―謝恵貞『横光利一と台湾―東アジアにおける新感覚派の誕生』(ひつじ書房、2021年)
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