2021 Fiscal Year Research-status Report
Sustained development and strengthening of the international advanced research cooperation network for uranium-based compounds of strongly correlated electron systems
Project/Area Number |
21KK0046
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柳澤 達也 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (10456353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
網塚 浩 北海道大学, 理学研究院, 教授 (40212576)
齋藤 開 東京大学, 物性研究所, 助教 (90825291)
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Project Period (FY) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | ウラン化合物 / 超音波測定 / 強磁場 / 極低温 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者の柳澤は過去の科研費プログラムでチェコ共和国・カレル大学に於いて育成したUBe13とそのTh希釈系の試料について、その基礎物性と研磨を現地の共同研究者K. Uhlilova博士に依頼した。同じくカレル大学において育成された新規ウラン強磁性化合物U3Cu4Ge4の超音波測定をドレスデン強磁場研究所のS. Zherlitsyn氏に依頼し、横波弾性定数c44モードの軟化(ソフト化)、縦波弾性定数c33モードに磁場に鈍感な超音波分散を発見した。 日本国内で育成されたウラン化合物試料(UIr2Si2, UTe2)と北海道大学で構築した超音波装置を用いて、低磁場領域の測定を行った。特にUTe2に関しては先ず国内において低磁場領域における弾性応答の知見を深めてから海外での強磁場施設を用いた強磁場実験に移行する予定であった。北海道大学では弾性定数c33, c44, c55の測定を行い、横波弾性定数c55モードが60 K付近からソフト化する構造不安定性の存在を明らかにした。一方、縦波弾性定数c33モード、熱膨張係数が負になる20 - 10 Kの温度領域で弾性定数が増大する肩構造を持つことがわかった。それぞれ磁場をH || b, H || [011], H || の方向に印加し、14 Tまでの磁場依存性を検証したところ、それらの弾性応答は磁場に対して鈍感であることがわかった。UIr2Si2では横波弾性定数c66モードに結晶場効果が原因とみられる40 K以下のソフト化、磁場下でショットキー異常とみられる弾性異常を観測し、局在5f模型に基づく結晶場解析を行なった。 分担者の網塚はUPt2Si2の共鳴X線散乱実験を行い、最近発見された320 Kで生じるCDWと35K以下で生じる5f電子による反強磁性秩序が相関していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクト開始直後に新型コロナウイルスの第6波とロシアのウクライナ侵攻が始まり、海外渡航への障壁が格段に増したため、本年度に予定されていた欧州への渡航は次年度以降にコロナ禍と国際情勢が落ち着くまで延期することにした。一方、海外の共同研究者とメールやオンラインツールによる研究打ち合わせと、現地研究者に試料育成の依頼や基礎物性測定を指示することに専念し、一部の研究対象物質で間接的なリモート実験を遂行することができた。よって当初の予定通り概ね順調に国際共同研究を始めることに成功したといえる。 日本国内におけるUTe2の超音波実験の予備測定も順調に進んでおり、今後展開される強磁場・静水圧実験の足掛かりとなる重要な実験結果が得られている。また、日本国内における物質探索によって新たに育成したウラン化合物UIr2Si2、UPt2Si2の基礎物性測定が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者はカリフォルニア大学サンディエゴ校のM. Brian MapleグループでUBe13とそのTh希釈系単結晶試料(Th: 0%, 2.7%)の基礎物性測定と欧州への移送準備を行う。また、ワシントン大学セントルイス校のS. Ran教授とUTe2のパルス磁場下における超音波測定用の試料育成について議論する。 柳澤と大学院生(D1)の日比野はドレスデン強磁場研究所に滞在し、希釈冷凍機を用いた超音波実験を行う。日比野は四極子近藤効果を実証するための典型物質PrIr2Zn20とそのY希釈系の超音波実験を実施し、超音波測定技術を修得する。 柳澤はチェコ共和国プラハのカレル大学においてUBe13のTh希釈系(Th: ~20%, 100%)の超音波測定を行う。さらにそれらの試料をドレスデンへ移送し、ドレスデン強磁場研究所で希釈冷凍機を用いた極低温超音波実験を行う。 東北大金属材料研究所・附属量子エネルギー材料科学国際研究センター(大洗)の青木大氏から提供されたUTe2を同・附属強磁場超伝導材料研究センター(仙台)へ移送し、25T超伝導磁石と3He冷凍機、二軸回転プローブを用いた極低温・強磁場領域の弾性定数C55の測定を行う。北海道大学では引き続きPPMSを用いてUIr2Si2, UPt2Si2の弾性応答の測定を行う。UTe2に関しては強磁場実験終了後、静水圧力下の測定に移行する。 分担者の齋藤はカレル大学のグループと共同でUNi4Bの11B同位体エンリッチ試料や関連物質(ThNi4B)の試料育成を行う。分担者の網塚は引き続き新たなウラン化合物の物質探索を行うとともに、電荷密度波秩序と反強磁性秩序を示すUPt2Si2の複雑な電子状態についてドイツ・ブラウンシュヴァイク大学のS. Suellowグループと議論をしながらさらに理解を深めていく。
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Causes of Carryover |
研究開始直後に新型コロナウイルスの第6波とウクライナ戦争が始まり、海外渡航への障壁が格段に増したため、本年度に予定されていた欧州への渡航は来年度以降に延期した。海外の共同研究者とはメールやオンラインツールによる研究打ち合わせに専念したため、主に海外渡航・滞在費が未使用分として生じた。海外での試料育成のための試薬等の購入費用も次年度以降に持ち越しとなった。国際情勢が落ち着き次第、今後の研究の推進方策に基づいて海外渡航を再開し、未使用額を執行する予定である。
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Research Products
(16 results)
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[Presentation] Low-temperature magnetic properties of uranium compounds with CaBe2Ge2-type crystal structure2021
Author(s)
今布咲子, 鈴木悠介, 髙力暁成, 村田怜也, 金子佑真, 日高宏之, 柳澤達也, 田端千紘, 中尾裕則, 清水悠晴, 青木大, 網塚浩
Organizer
JPhysics+イン越後湯沢
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[Presentation] CaBe2Ge2型構造を持つU化合物の低温磁性2021
Author(s)
今布咲子, 鈴木悠介, 髙力暁成, 村田怜也, 金子佑真, 日高宏之, 柳澤達也, 田端千紘, 中尾裕則, 清水悠晴, 青木大, 網塚浩
Organizer
電流駆動現象が拓く新しい物質科学
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