2022 Fiscal Year Research-status Report
新生代石灰質ナノプランクトンの進化と古生物地理に基づく新たな年代指標の開発
Project/Area Number |
21KK0248
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
宇都宮 正志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (10738313)
|
Project Period (FY) |
2022 – 2024
|
Keywords | 石灰質ナノ化石 / 生層序 / 年代指標 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
石灰質ナノプランクトンは海洋表層の第一次生産者として中~低緯度の海洋に広く分布し,その化石は石灰質ナノ化石と呼ばれている.石灰質ナノ化石の種の出現・絶滅イベントは他の層序学的な手法(古地磁気極性,放射性同位体,氷期/間氷期の周期性など)と組み合わせることで,古環境の時系列復元や石油・天然ガス資源開発の際の層序対比などに幅広く用いられている.一方,信頼性の高い時間面として用いられているイベントは限られており,また例えば鮮新世以降ではそれらの多くが絶滅イベントであることから,再堆積などにより古い時代の化石が混入した場合に年代推定が困難となることも多い.また,水温や栄養塩など生息時の表層海洋環境の影響で年代指標となる種の産出頻度が低い場合もある.そのため種の出現イベントを認定し,環境要因も評価した上で信頼できる年代指標として確立することは重要である.本研究課題では,種の出現イベントを信頼できる年代指標として確立することで,基課題である堆積盆間の高精度対比の時間分解能を飛躍的に向上させることを目指す. 新生代において石灰質ナノ化石の種の多様性は一般に温暖期に高くなることが知られていることから,新生代の温暖期やその直前の時期の海成層は種の出現イベントを探る上で適している.米国地質調査所USGSには米国東岸地域の保存の良い石灰質ナノ化石を多産する新生代温暖期の堆積物試料が保管されており,また新生代温暖期の全球的な古海洋変動に関する研究蓄積がある.本年度は11月にUSGSにて事前打ち合わせを行うとともに研究集会へ参加し,その後1月に再度渡米し共同研究を開始した.5月現在までに新生代の温暖期における石灰質ナノ化石群集に関する意見交換を行いながら,北米東沿岸域の堆積物コア試料を米国内外の研究者と共同で採取し,石灰質ナノ化石群集の定量的把握を進めている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
11月に予定通り事前打ち合わせと研究集会への参加を兼ねてUSGSへ短期出張した後,予定通り1月に再度渡米し在外研究を開始した.Jean M. Self-Trail博士,Harry Dowsett博士らと新生代の特定の温暖期における石灰質ナノ化石群集に関する意見交換を行いながら,北米東沿岸域の堆積物コア試料や露頭試料を採取して,石灰質ナノ化石群集の定量的把握を進めている.石灰質ナノ化石群集の定量的評価についてはすでに一定の成果が得られており、滞在中に米国内での学会発表を予定している.以上から,おおむね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
米国滞在中に,石灰質ナノ化石の種の出現イベントを認識するための新生界の堆積物試料を層序学的な評価を行いながら採取し,偏光顕微鏡を用いて群集の定量的な把握を行う.また電子顕微鏡を用いて化石の形態計測を行い,祖先種から子孫種への形態変化を時系列で明らかにする.また各地点の相対的産出頻度や保存状態を確認し,種の出現年代の違いが沿岸-外洋や緯度による種構成の違いや,進化・絶滅による種構成の違い,および保存の度合いに影響を受けているかどうかを評価する.出現イベントの地域性を検証後,化石群集の特徴を踏まえて種の出現イベントを年代指標として用いることで基課題にフィードバックする.得られた成果は国内外で学会発表を行い学術論文として公表する.
|