2022 Fiscal Year Research-status Report
Combustion and Ignition dynamics with a novel laser ignition technologies for methane-oxygen rocket engines
Project/Area Number |
21KK0257
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中谷 辰爾 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00382234)
|
Project Period (FY) |
2022 – 2024
|
Keywords | ロケットエンジン燃焼 / 燃焼不安定性 / 燃焼試験 / レーザー点火 / 噴霧の微粒化 / 分光スペクトル / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,ロケットエンジンにおいて振動燃焼などへの対応などの開発コストを下げるためエンジンをクラスター化し大推力に対応する手法が取られている.クラスターエンジンを同期して点火することが必要であるが,従来の電気火花やトーチでは点火の同期が困難である.点火がスムーズに行うことが出来なければ燃焼器内に混合気が滞留し大きな圧力スパイクや不安定燃焼が生じ,燃焼器を破壊する.本研究では,高度に同期が可能な点火手法としてレーザー点火に着目している.近接2点レーザーブレイクダウン火花点火手法を提案し限界付近でロバストな火炎核を形成するメカニズムを調べている.また,メタンを推進剤とするロケットエンジンへのレーザー点火の応用を行っている.本年度は,基礎研究としてメタン/空気混合気に対して,近接2点レーザー点火によって生じる衝撃波の干渉により形成される流れ場により,サードローブの形成を抑制するのに加え,マッハステム形成の流れ場を用いたロバストな火炎核を形成した.その条件をブラスト波理論や衝撃波前後の関係式により明らかにした.特に,高圧力,希薄限界付近の混合気に対して,単点でのレーザー点火と比較して,最小点火エネルギーを低減するのに加え,火炎伝播に移行する誘導期間を低減することを示した. また,ロケットエンジン燃焼器における高圧力,高温度場における状態量計測手法として,OH*およびCH*化学発光測定の応用を検討した.まず大気圧の平面火炎バーナーを使用し,反応帯近くおよび高温ガスの温度測定手法の検討を行った. OH*の化学発光挙動は強く高温ガスの温度測定に応用することができる可能性を示した.一方で,火炎帯近傍においては,熱平衡の過程から離れる分布が示された.DLRのロケットエンジンモデル燃焼器内において,分光測定を実施することで,本手法の適用可能性が確認されている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,ロケットエンジン点火において同期可能なレーザー点火技術を適用し,高性能な点火形態を実現することを目的とする.また,点火初期に発生する圧力スパイクを含む燃焼不安定性の発生メカニズムを明らかにする.本研究において,研究代表者は光学系を用いた近接2点レーザーブレイクダウン火花点火により,サードローブの形成の抑制や,衝撃波干渉によるマッハ衝撃波による流動を利用した高性能な点火形態を実現した.マッハステムの形成条件やブラスト波理論による時定数の推定によりメカニズムを説明することができた.点火挙動に関しても,静止雰囲気中におけるメタン/空気混合気において1.0MPaの希薄限界付近の点火に際して,最小点火エネルギーの低減と点火の誘導期間の大幅な低減を実現している.非常に独自性および革新性の高い結果が得られている. また,燃焼不安定性への解析手法として,これまで光学窓を利用した計測を実施していたが,超臨界に至る高圧では大型の光学ガラスの破損が問題となる.そのため,10点以上の多点ファイバーを用いた計測手法を提案し,ロケットエンジン燃焼器内の状態診断に適用することを目指している.本研究では,本年度は大気圧環境においてOH*の電子遷移に伴う振動回転スペクトルを調べることで,温度を測定できる可能性をバーナー試験で示した.一方で,反応帯近傍では化学反応の影響を受けたsuper thermal equilibriumと考えられる状態が確認され,エネルギー準位に対する状態分布がボルツマン分布からのずれが示された.これらの特性を考慮し,今後高精度に温度を測定することに加え,発熱量や化学反応特性を診断することを目指す.以上の観点から,本年度は独自性および革新性の高い点火手法を示すことができ,新たな計測診断手法の可能性を示すことができた.以上の観点から順調に進捗していると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
レーザー点火に関しては,近接2点レーザー点火手法の圧力依存性を明確にする必要がある.現在では,1.0MPaにおいて明確な点火性能の向上が確認されているが,その閾値において燃焼速度の当量比や圧力依存性などとの関係を明確にすることで点火促進メカニズムを明らかにする.また,現在は静止雰囲気中における点火特性に関する知見が得られているが,実際の点火は流動中の高乱流場で行われる.これらの環境下においては,点火エネルギーが非常に大きくなり,実験の実施が困難になる可能性があるが,実施可能な条件を探索し,高伸張場における上記点火手法の有効性を示すことを目指す. 分光計測に関しては,OH*およびCH*などの複数の化学種に拡張し,化学種の化学発光特性を明らかにする.電子励起を伴う振動回転スペクトルを熱平衡,非平衡の状態で計算可能な手法を確立し,ガウス過程を始めとする機械学習手法と融合することで,実験スペクトルと理論スペクトルを結合し,温度空間等に写像する.それにより,熱平衡温度,振動温度,回転温度,非平衡度(振動温度と回転温度の差異)を考慮することで燃焼状態を診断する手法を確立する.電子励起を伴う振動回転スペクトルは様々な振動量子数の遷移を含むため,これらの枝の特性を明確にする必要がある.それにより,温度や発熱に関する様々な情報を得ることができる可能性がある.高圧力雰囲気中においては,分子の衝突が促進されるため熱平衡により近づく可能性がある.バーナー試験を中心に圧力の影響を調べ,これらの分光挙動の違いを明らかにする.高圧力雰囲気中における燃焼診断手法の確立を目指す.また,メタン/液体水素を推進剤とするロケットエンジン燃焼器内の計測に応用することで,燃焼器内の非線形燃焼挙動や振動燃焼を診断し,メカニズムに関する知見を得ることを目指す.
|
Research Products
(4 results)