2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト化NOGマウスを基盤とした個別医療に対応するヒト型実験システムの開発
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22220007
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Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
伊藤 守 公益財団法人実験動物中央研究所, その他部局等, 研究員 (00176364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀谷 美恵 東海大学, 医学部, 講師 (50338787)
安藤 潔 東海大学, 医学部, 教授 (70176014)
小柳 義夫 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (80215417)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 実験動物 / 免疫不全動物 / ヒト化マウス / 個別医療 |
Research Abstract |
現在まで作製した改良型マウス52系統のうち、31系統が系統樹立と解析がほぼ終了した。残る21系統については、現在系統樹立と特性解析中である。そのうち、下記の興味深いヒト化マウスが作製できた。 1)hIL-2-NOGマウスにヒト臍帯血CD34+造血幹細胞(HSC)を移入すると、マウスの中でヒトNK細胞が優位に分化、増殖した。このヒトNKマウスにヒト白血病細胞株でNK感受性のK562を移植するとその増殖を拒絶された。 2)hIL-4-NOGマウスにヒト末梢血単核球を移入してもGVHDで死亡せず、ヒト細胞が長期に存在する。このhIL-4-NOGマウスではヒトT細胞のTh2細胞への移動が認められた。 3)GM-CSF/IL-3-NOGマウスにヒトHSCを移入すると、このマウスの中でヒト好中球、抗酸球や好塩基球や単球、肥満細胞が分化増殖する。このマウスに、花粉症患者血清を皮内に接種後、花粉抗原を色素とともに静脈内注射すると、受動皮膚アナフィラキシー反応を呈した。 4)ヒトHLA class II分子のDRA0405を導入したNOGマウスに、DRA0405ハプロタイプを持つヒトHSCを移入した後、Ovalbuminで免疫すると、血液中でOvalbumin特異的なIgG抗体を検出できた。 5)分化阻害剤2iを添加した培養系を用いて、極めて高率にNOGマウス由来ES細胞の樹立ができた。このES細胞は生殖系列への寄与が確認され、現在、このES細胞を用いて、マウス遺伝子をヒト遺伝子に入れ替えたKIマウスの作製を実施している 6)ヒト人工胸腺の作製のための基礎的検討として、ヒトiPS細胞の代わりにマウスES細胞を用いて、人工胸腺作出への要点と思われるES細胞から胸腺上皮細胞(TEC)への分化誘導法の条件検討行っているが、現在までに胸腺上皮細胞(TEC)の分化促進には成功していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)現在までに作製した改良型マウスは52系統に及ぶ。そのうち、31系統で系統樹立と解析がほぼ終了した。また、21系統で系統樹立を行いつつ、解析を行っている。hIL-2-NOGマウス、hIL-4-NOGマウス、GM-CSF/IL-3-NOGマウスなどで極めて興味深いモデルが作製でき、順調に推移している。その他の改良型マウスを解析することで、様々なヒト疾患の解明や治療薬の開発、検定に利用できる動物実験系を確立できる可能性がある。 2)ヒトHLA class II分子のDRA0405を導入したNOGマウスにDRA0405ハプロタイプを持つヒトHSCを移入することで、抗原特異的なIgG抗体が産生できることが分かった。このことで、当初の目的であったヒト型免疫保有マウスの道筋が立った。 3)NOGマウス由来のES細胞が確立できたため、マウス遺伝子とヒト遺伝子を置き換える改良型NOGマウスの作製が可能になった。このことで、従来時間を必要としたNOGマウス背景のKIマウスを比較的早期にできるため、研究の幅が拡がった。 4)一方で、本研究の目的の1つである個別化医療のための、ヒトiPS細胞からの人工胸腺や造血幹細胞の作出は未だ、十分な結果が得られていない。これについては、残り期間で鋭意努力し、トライしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.改良型NOGマウスのヒト化モデルとしての解析とその特性検索:系統樹立・解析がほぼ終了した31系統については、データをまとめ、外部へ公表する。と同時に、外部機関への頒布と提供を行って行く。系統樹立中または解析中の21系統については、系統の確立を急ぎ、解析を進める。解析後は外部公表と頒布を行って行く。 2. 完全ヒト型免疫系保有マウスの作製:今回のHLA class II分子を導入したNOGマウスで、ヒトT、B細胞の機能的な相互作用が得られたことから、ヒト型免疫保有マウスをより使い易くするために、以下の検討を進めて行く。1)日本人に多いHLAハプロタイプの遺伝子を挿入したNOGマウスを幾つか作製する。 2)個別化医療のためにマウス胸腺へのウイルス感染によりHLAの導入法を検討してゆく。3)現在のNOGマウスはじめ改良型マウスでは、強度の免疫不全のためにリンパ装置の発達が悪い。リンパ装置の発達を良好にする改良型マウスを作製してゆく。 3.NOGマウス由来ES細胞の樹立と遺伝子改変法の開発:NOG由来ES細胞を使って作製したヒトErythropoietin、ThrombopoietinおよびG-CSF KI NOGマウスの解析を行い、それらを用いたヒト化マウス動物実験系を検討する。 4.iPS細胞からのヒト人工胸腺の作製や造血幹細胞の樹立の試みの継続:胸腺上皮細胞の分化を十分に補足できるレポーターES細胞やマウスを作製し、胸腺上皮分化を的確に捉えるシステムを作製する。これらレポーターES細胞やマウスを用いて、分化誘導培養法を検討して行く。
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Research Products
(17 results)