Research Abstract |
本研究では,広帯域レーダおよび広帯域干渉計を主たる測器とする広帯域レーダシステムネットワークを用いて,集中豪雨,ダウンバースト,落雷を引き起こす積乱雲の発生,発達,衰退(ライフサイクル)を,高い時空間分解能で観測し,積乱雲の力学的振る舞いと電磁気力を含む微物理過程を併せて統一的に解析することによって,物理モデルを活用した事前予測手法を確立することを目的としている。 本年度においては,現有する3台の広帯域レーダに加えて,可搬型の広帯域レーダの開発に着手した。レンズアンテナ,高周波回路部,レドームの開発を行い,2重偏波化が可能となるよう冗長性を有する構成とした。また,中心周波数をKu帯(15.75GHz)としているため,降雨減衰がC帯やX帯に比して顕著である。そのため,ベイズ推定に基づいた統計的手法による降雨減衰補正手法について検討した。その結果,従来から広く用いられているHitchfeld-Bordan解より,開発した減衰補正方法の方が高精度かつ安定的に動作することが数値計算によって示され,次年度に実装することが検討された。さらに,同手法に基づいてネットワーク環境下における補正手法を検討した結果,比較的簡便にかつネットワーク環境を生かしたアルゴリズムの開発に成功した、また,レーダネットワークにおけるデータフローについて,開発した降雨減衰補正手法を考慮して検討を行った。 一方,広帯域干渉法に基づいて,広域雷放電モニタリングシステムの検討を行った。10MHz以下の広帯域電磁界を測定し,GPSで同期することにより数十kmにわたる範囲内で,雷放電の標定が可能であることが示された。このシステムをより広範囲にわたって配置し,処理を行うシステムの開発を検討している。
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