2012 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア熱帯域におけるプランテーション型バイオマス社会の総合的研究
Project/Area Number |
22221010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 登 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (50273503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内堀 基光 放送大学, 教養学部, 教授 (30126726)
水野 広祐 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (30283659)
祖田 亮次 大阪市立大学, 文学研究科, 准教授 (30325138)
杉原 薫 政策研究大学院大学, 教授, 教授 (60117950)
徳地 直子 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60237071)
河野 泰之 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (80183804)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 東南アジア / バイオマス社会 / プランテーション / 多様性 / 生存基盤 / 文理融合 / 流域社会 / 持続可能性 |
Research Abstract |
24年度には、以下の活動を実施した。 1)新規加入連携研究員の臨地調査のための許可の申請2)アブラヤシ・プランテーションならびにアカシア・プランテーション施業地での調査継続のためセミナー開催と成果報告を通した企業との関係強化3)フィールド・ステーション設置を通したサラワク大学東アジア研究所と協力体制の強化4)「商品連鎖研究会」などの開催を通した文理融合的調査の方法論確立、情報共有のための研究会や国際セミナーの開催5)調査に必要な機器の購入(カメラ・トラップ、燕の巣調査関係機器類等)6)共同調査の実施と各プロジェクトメンバーによるフィールドワークの継続7) ニュースレター『熱帯バイオマス社会』(Equatorial Biomass Society)の日本語版及び英語版の発行8)マレーシア、サラワク州をフィールドとする自然科学者による外部評価の実施。 Zedtee Sdn Bhd、Sarawak Planted Forest、Keresa Sdn Bhdの施業地における臨地調査を継続するとともに、サラワク大学、サラワク博物館、サラワク森林公社などの現地学術研究機関と協議を引き続き行い、共同調査体制の維持を図った。日本国内においては、科研分担者ならびに協力者を招聘した会合を3回、講演会を4回、研究会を4回開催し、マレーシア、サラワク州クチン市において研究成果中間報告会を開催、現地の大学関係者、森林局、企業関係者など約80名の参加を得た。衛星画像、地図、民族誌、歴史資料、統計資料などの情報共有を通して、プロジェクト参加者は調査プロットの特定を継続して行うとともに、調査に必要な機器選定と購入を進めた。研究活動は、ニュースレター『熱帯バイオマス社会』(Equatorial Biomass Society)の発行(日本語版3号、英語版4号)を通して調査成果の発信につとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨地調査開始より現在までの2年半において、マレーシア・サラワク州のクムナ・タタウ川流域での臨地調査によるデータ収集に加えて、学会等で6回(国内1回・国外5回)の成果発表を行い、マレーシアの大学・政府・企業関係者、国内外の東南アジア研究者・熱帯環境研究者からのフィードバックを調査活動に反映することができた。2012年6月29日にマレーシア・クチン市において成果の中間報告を行い、大学・政府・企業・マスコミ・NGO関係者など約80人の参加を得た。このセミナーは現地メディアでも広く伝えられ、日本発の調査研究のプレゼンスを強くアピールすることができた。活発な国際的成果発信は、本プロジェクトの特徴の1つであり、国際学会での個人発表件数は合計で55にのぼる。研究代表者・石川が参加する共同プロジェクトがブルネイ、シンガポール、オランダ、アメリカで開始され、本プロジェクトの国際的存在感確立にむけたネットワーク形成が進んでいる。 本研究の開始当初から、サラワクでの調査経験を有する研究者、ならびに東南アジア地域研究に精通する研究者を招聘して、過去3回にわたってプロジェクトに対する外部評価を受けた。これらのコメントを全体会議、ニュースレター、ならびにグループメールを通してプロジェクト・メンバーで共有し、改善にむけた方策を効率的に講じることができた。 本研究では、プロジェクト参加者全員による情報共有体制の構築に心がけ、臨地調査報告と毎年度の進捗状況報告を義務づけた。「全体集会」(計9回)、「商品連鎖研究会」(計4回)、「異分野研究会」(共同調査推進のための研究会:計6回)、演者招聘研究会(計13回)、ニュースレター(和文・英文計16号発行)、グループメール通信(2013年3月末時点で累計561通)、頻繁なウェブサイトの更新などを通した緊密なコミュニケーション維持に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25~26年度は、以下の2点に重点を置く。 ①小農生産を流域生態系保全プログラムの重要な要素と位置付け、在地社会アグロ・エコロジー・モデルを構想する。具体的には、ペアリング調査を深化・拡大させつつ、アブラヤシ植栽地、焼畑耕作地、休閑林、原生林(集落保存林)などからなる「良質なモザイク的景観」をいかに形成・維持するか、その可能性と課題を検討する。それによって、「土地・森林開発/自然経済維持」あるいは「経済的利潤確保/生態系保全」を、トレードオフ関係として捉えず、両者のバランス・モデルを提示し、在地社会の生存基盤の再構築可能性を指摘する。 ②各個人、各ペア、各班によって収集された基礎データを集約・整備することで、国家市場連環やグローバル連環に関する議論をより説得的かつ厚みのあるものにする。具体的には、商品連鎖論、ライフサイクル分析、フードシステム・アプローチなどの枠組みを援用することで、熱帯産品をめぐる市場ネットワークの総体を「空間論」として再編成する。それと同時に、グローバル・ヒストリーの観点から、内陸河川交易と沿岸貿易、アジア域内貿易、さらには国際貿易の議論を連結させつつ、18世紀から現在までの国際的分業生産体制を再評価することで、従来とは異なる熱帯を基軸とした新しい国際分業論を構築する。最終的には、これらの成果を文明生態論の枠組みを用いて統合する。
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Research Products
(101 results)