2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22222002
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Research Institution | The Middle Eastern Culture Center in Japan |
Principal Investigator |
大村 幸弘 (財)中近東文化センター, アナトリア考古学研究所, 所長 (10260142)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | アナトリア / 文化編年 / 先史時代 / カマン・カレホユック |
Research Abstract |
アナトリア考古学研究所は、第28次カマン・カレホユック発掘調査を平成25年6月24日~9月8日まで行った。この調査の主目的は、カマン・カレホユック遺跡の北区で『文化編年』、特に前2千年紀初頭以前の先史時代の『文化編年』を構築することにある。 当該年度、北区のIV~VIII区で第IIIc層-アッシリア商業植民地時代、第IVa層-中間期、第IVb層-前期青銅器時代の3層に焦点を合わせて調査を行った。第IIIc層は、メソポタミアのアッシリア商人が中央アナトリアに居留区を建設し、経済活動を盛んに行なった時代である。この第IIIc層の建築遺構をほぼ取り外し、第IVa層の中間期の調査を重点的に行った。C14の分析結果から、この中間期は前3千年紀末~前2千年紀初頭に年代付けられる。出土する土器を観察すると、第IVa層の中間期は、明らかに第IVb層の前期青銅器時代、また、第IIIc層のアッシリ商業植民地時代のものが混在しており、中央アナトリアが前期青銅器時代から中期青銅器時代にかけての過渡期であることが明らかであり、既にアッシリア商人が中央アナトリアに入り込んでいたことを十分に物語っている。この第IVa層は、在地の文化とメソポタミアの文化がある意味では融合した形を取っているとも言えよう。この第IVa層では、鉄資料が30点近く出土している。鉄器時代は、一般的に前1190年、ヒッタイト帝国が崩壊した後に始まったと言われているが、それより凡そ800年以上も前の文化層から鉄資料が出土したことは、製鉄の起源の再考にも結び付くものである。現在、分析資料を本邦へ持ち帰り分析を行っているところである。第IVb層の発掘調査は、VIII区を中心に行なったが、この文化層からは第IIIc層に見られる赤色磨研土器は1点も確認することは出来なかった。出土した土器の多くは、手づくね製であり粗製のものが中心であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前2千年紀から前3千年紀にかけての『文化編年』を中心に調査を進めたが、ほぼ順調に作業は進んでいるといえる。この『文化編年』の構築作業は、発掘調査以上に出土遺物の整理に時間を要する。少なくとも数十万点の考古資料の洗い、分類をしたところである程度の『文化編年』の構築作業を進めることができる。出土資料の整理、分類は、発掘調査が終了した9月中旬以降、2013年5月末まで継続して行われ、第IVb層、前期青銅器時代と中間期の差異がほぼ明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
『文化編年』の構築の成否には、発掘調査と同時に、莫大な出土遺物の整理作業がかかっていると言っても過言ではない。平成26年度でも北区の第IVa層、第IVb層を中心として発掘作業を継続して行きたいと考えている。それと同時にこれまで出土した土器を中心とした考古資料と建築遺構を平行して整理を行ない、層序を明確にして行きたいと考えている。平成24年度に出土した鉄資料は、鉄鉱石であることが判明している。今後も第IVa層、第IVb層出土の金属資料に注目し、『文化編年』の構築の一助になればと考えている。
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Research Products
(14 results)