2013 Fiscal Year Annual Research Report
KLF転写因子による生活習慣病・癌の病態分子機構解明と治療応用
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22229006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 良三 東京大学, 医学部附属病院, 名誉教授 (60207975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞鍋 一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70359628)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 転写因子 / 動脈硬化 / 糖尿病 / 慢性腎臓病 / メタボリックシンドローム |
Outline of Annual Research Achievements |
Kruppel-like factor (KLF)ファミリーはzincフィンガー型転写因子であり、現在17種類が知られている。本研究では、KLF5とKLF6に着目し、生活習慣病とがんにおける機能を検討した。心血管系においては、KLF6が心筋細胞で働き、線維化を制御していることを見いだした。心筋細胞特異的にKLF6を欠損するマウスでは線維化が抑制されるが、線維芽細胞でのKLF6欠損は線維化に影響を与えなかった。また心筋細胞と線維芽細胞の相互作用を仲介する分子としてトロンボスポンジンを同定した。これらの結果は、心筋細胞と心臓線維芽細胞の新たな相互作用の分子機序を明らかとするものである。また、KLF6はマクロファージで働き、大動脈炎症と解離を制御することも見いだした。マクロファージを含む骨髄系細胞でのKlf6欠損によりアンジオテンシンIIと塩化カルシウム刺激による大動脈炎症が亢進し、解離を生じるようになる。KLF6による炎症制御の分子機序を明らかとする成果である。一方、KLF5は腸管幹細胞に発現し、腸管幹細胞のレベルで癌化を制御していると考えられた。腎臓においては、KLF5が交感神経系からの刺激により活性化し、腎臓内で、集合管上皮細胞、マクロファージ、血管内皮細胞の相互作用を引き起こし、腎臓由来サイトカインの発現を促すことを明らかとした。KLF5は心臓-脳-腎臓のネットワークにおいても鍵分子として機能していることが示された。このようにKLF5とKLF6が寄与する炎症や癌化の新しい分子機序を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KLF5とKLF6の両者の研究を並行して進めることにより、心臓では心筋細胞でKLF6が線維芽細胞でKLF5が重要であり、これらの転写因子が二つの細胞種で機能して、細胞間相互作用を制御していることを明らかにすることができた。この結果は、KLF転写因子の機能分化と相互作用を明らかにするだけでなく、心臓ストレスへの応答において、心筋細胞と間質に存在する線維芽細胞等のコミュニケーションが重要なことを明確にしており、循環器分野への強いインパクトを持つ。さらに、心臓組織マクロファージが心臓の保護的作用に重要なことも世界に先駆けて見いだし、その作用に必須の分泌因子の同定にも成功した。 また、心腎連関の機序として、心臓-脳-腎臓のネットワークが重要であり、KLF5はこのネットワークを仲介する腎臓由来サイトカインの発現を司っていることを見いだした。興味深いことに、同じサイトカインをKLF6はマクロファージで発現制御しており、この点でもKLF5とKLF6との機能的な類似性と分化が認められ、当初の研究目的であるKLFネットワークの機能解析に関して、全く新たな知見を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに明らかにした各病態におけるKLF5とKLF6のメカニズムについて、さらにその分子機序の詳細を検討する。また、こららのメカニズムに対する介入による治療効果を、心不全モデル等で検討する。また、ヒトの病態における意義についても検証を進める。
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Research Products
(4 results)