2011 Fiscal Year Annual Research Report
統合的心筋梗塞治療に向けた新たな分子レベルでの基礎研究
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22229007
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 匠徳 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (60548759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤沼 啓志 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50450721)
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Keywords | 心筋梗塞 / 線維化 / sFRP2 / Pcolce-1 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
我々は2009年に、sFRP2という細胞外分泌性タンパク質の機能抑制が心筋梗塞において、線維化抑制及び心機能改善を引き起こすことを見出した(Nature Cell Biology 2009)。この発見は心筋梗塞において、sFRP2の発現・機能抑制が心筋細胞再生促進、心血管再生促進、線維化抑制すべてにつながることを示唆した。したがって、sFRP2及びその関連因子群の発現機能を抑制することにより、梗塞後の心機能改善をこれまでのような一次元的でなく、新たな多次元的治療により実現できる可能性がひらけた。そこで、平成23年度はsFRP2関連因子群の発現・機能抑制のみよりも一段と効率の高い治療法につながる、新規の分子ターゲットを同定することを目的に、研究を実施した。その結果、以下2点の成果をあげた。 ●sFRP2と同様に線維化促進に関わる、新規のPcolce-1というタンパク質の発現が、心筋梗塞後の線維化期特異的に上昇することが明らかになった。これは、Pcolce-1の機能抑制が、新たな心筋梗塞治療のための分子ターゲットとなりえる可能性を示唆する。したがって、Pcolce-1欠損マウスの心筋梗塞モデルを作成し、現在そのマウスモデルの心筋梗塞後の線維化、心機能を解析中である。 ●昨年度の研究で、ダメージを受けた組織が再生する際に、血管内皮細胞由来の分泌性タンパク質群がまわりのダメージを受けた組織の細胞に働きかけることにより、その組織の再生を促すという、新規の組織再生メカニズムを発見した。本年度は、このメカニズムが、さまざまな組織の再生に普遍的に関わり、重要な役割を担っていることを明らかした。そこで、このような機能をもった血管内皮細胞由来の因子群を"Angiocrine factor"と名づけた。この発見は、"Angiocrine factors"、また、それらの発現・機能を促す薬剤が、心組織およびその他の組織の再生治療薬として有効である可能性を示唆するものである。この"Angiocrine factor"の発見を論文として発表した(Cell,147,539-553,2011)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「8.研究実績の概要」に記されているように、設定した研究目標は順調に達成されつつある。本研究プロジェクト開始から2年間で、sFRp2、sFRP2関連因子の発現・機能解析は完了し、心筋梗塞の新規分子治療ターゲットとして"Angiocrine factors"を発見した。これらの結果は、Nature、Cellという国際一流雑誌に一報づつ発表された。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究成果をふまえて、今後は心筋梗塞治療のための、さらに新規の分子治療ターゲットの同定、それらの治療ターゲットとしての適切性を検証する。今後は特に、1)虚血環境化特異的な細胞内代謝制御機構の解析;2)組織再生における「細胞老化」(Senescence)の役割と制御機構の解析;3)組織再生における血管形成制御機構の解明、という3本柱を中心に研究を展開する。
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Research Products
(2 results)