2012 Fiscal Year Annual Research Report
統合的心筋梗塞治療に向けた新たな分子レベルでの基礎研究
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22229007
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 匠徳 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (60548759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤沼 啓志 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50450721)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 心筋梗塞 / 線維化 / 細胞内代謝 / 細胞老化 / 血管形成 |
Research Abstract |
臓器間の連結血管系の同定。心臓をふくめた臓器の再生には、その臓器内の血管を再生することは必須である。われわれは、ゼブラフィッシュの膵臓と肝臓を繋ぐ血管系を同定し、それらがどのような過程を経て形成されるかをライブイメージングなどを用いて明らかした。 細胞内代謝制御による心筋梗塞における線維化制御。心筋梗塞において、心臓が虚血(低酸素、また栄養飢餓)状態になる。心筋細胞を含めた多くの心臓にある細胞は虚血状態においては、酸素・栄養(グルコースなど)不足のため、十分なエネルギーを産生できなくなり細胞自体がしまう。一方、線維芽細胞は、虚血環境下でも、生存し増殖することができる。われわれは、その原因のひとつに、線維芽細胞が、虚血環境下では、通常とは違う、虚血特異的な細胞内エネルギー代謝経路をつかって、低酸素、栄養飢餓状態でも、生存に必要なエネルギーと生体高分子を生成していることを見いだした。また、この虚血特異的な細胞内エネルギー代謝を阻害することのできる薬剤をも同定した。さらに、この薬剤をマウスの心筋梗塞モデルに投与することで、心筋梗塞後の線維化を減少させることに成功した。 心筋梗塞における細胞老化(Senescence)制御機構の解析。ゼブラフィッシュの心臓は再生するが、ヒトを含む哺乳類の心臓は再性能がほとんど無い。われわれは、再生するゼブラフィッシュの心臓は、再生時に細胞老化(Senescence)様の現象がおこるが、再性能のほとんどないマウスの心臓は、心筋梗塞後、このような現象はほとんど検出できないとこを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記 「8.研究実績の概要」に記されているように、設定した研究目標は順調に達成されつつある。本研究プロジェクト開始から3年間で、これらの成果は、Nature、Cellという国際一流雑誌に1報づつ発表、PLOS ONEに1報発表、Natureに1報投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究成果をふまえて、今後は心筋梗塞治療のための、さらに新規の分子治療ターゲットの同定、それらの治療ターゲットとしての適切性を検証する。今後は特に、1)虚血環境化特異的な細胞内代謝制御機構の解析;2)組織再生における「細胞老化」(Senescence)の役割と制御機構の解析;3)組織再生における血管と臓器組織の相互作用制御機構の解明、という3本柱を中心に研究を展開する。
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Research Products
(3 results)