2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける家畜の伝播とその展開に関する動物考古学的研究
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22240083
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
松井 章 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (20157225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 直隆 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (00109521)
南川 雅男 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (10250507)
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
山田 仁史 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90422071)
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Keywords | 家畜 / 動物考古学 / DNA / 安定同位体 / 食性分析 / 民族考古学 |
Research Abstract |
本年度も表題にかかわる研究を順調に進め、以下のような実績を挙げることができた。 2011年8月に台湾を訪問し、共同研究者である李匡悌博士と、台南サイエンスパーク出土の動物遺存体の共同研究について打合せを行った。琉球諸島のイノシシ・ブタの古mtDNA分析の成果を、総合研究大学院大学の高橋遼平氏を筆頭に、石黒直隆氏らと沖縄県立博物館で開催された日本人類学会で発表し、縄文前期の沖縄県読谷村所在の野国B貝塚から出土したイノシシ属が、琉球諸島以外の南方から搬入されたブタであった可能性や、他の島嶼部出土のイノシシ属もブタであった可能性を指摘し、筆頭講演者の高橋氏は若手発表者賞を受賞した。安定同位体による食性分析は、中国浙江省の田螺山遺跡などの資料を分析した。 10月22日富山県埋蔵文化財センターで開催された特別展、「富山の貝塚」の記念講演として、世界各地の貝塚の研究成果を比較し、狩猟採集から農耕牧畜への変化についても発表した。3月17日に立命館大学で開催された国際シンポジウムにおいて、東アジアの家畜の起原と伝播について成果発表を行った。 秋期に予定していたラオス山岳少数民族の民族考古学調査が、メコン川中・下流域をおそった大洪水のため実施できず、予算を繰り越して2012年5月18日から28日に実施した。その結果、ラオスのイノシシ、セキショクヤケイの現生標本の入手のほか、カム族、タイルー族、モン族ら少数民族の焼畑の雑草取り、害獣狩猟など、新たな季節の生業活動を記録できた。 日本各地の遺跡から出土した動物遺存体の同定・分析を実施し、報告書を執筆・出版した。特に弥生後期のカラカミ遺跡では、最古のネコ、ニワトリの遺存体を報告し、兵庫県見野古墳では、須恵器の足跡がネコのものであることを証明し、従来、文献史料や絵画資料から平安時代と考えられてきた日本列島へのネコの移入が、6世紀であったことを証明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
民族考古学、古DNA分析、安定同位体、比較形態学を柱にした家畜の起原と系統の研究は、資料の蓄積が進み、学会発表も順調に行っている。さらにニワトリの原種、セキショクヤケイの骨格比較標本の収集をすすめつつある。カラカミ貝塚や大友宗麟館跡でニワトリ、ネコを発見できたことも、当該研究の成果として特筆できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ロシア沿海州、韓国、中国、台湾、ラオス、ベトナムなどに共同研究者を得て、一層の学際的研究が可能となりつつある。また、比較形態学、古DNA,安定同位体による食性分析について、日本国内の若い研究者も加わり、今後も「考古科学」、「動物考古学」の確立と、家畜・家禽の起原について研究を推進していく。 ニホンイノシシと全く形態の異なる南方系のブタの形態の、3D計測による比較も進行中である。大分市大友城下町、大坂城下町などの発掘により、戦国時代、南蛮貿易によってブタを初め、多くの家畜・家禽が、東南アジア、中国よりもたらされた可能性が判明しつつある。中国の文献や文献史、絵画史からの動物関係記事の渉猟にも努めたい。
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Research Products
(9 results)