2012 Fiscal Year Annual Research Report
日本古典籍における【表記情報学】の基盤構築に関する研究
Project/Area Number |
22242010
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
今西 裕一郎 国文学研究資料館, 館長 (90046219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相田 満 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (00249921)
伊藤 鉄也 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (10232456)
野本 忠司 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (20321557)
江戸 英雄 国文学研究資料館, 研究部, 助教 (50290870)
海野 圭介 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (80346155)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国文学 / 表記情報学 / 本文研究 / 源氏物語 |
Research Abstract |
本研究の目的は、『源氏物語』を中心とした古典文学作品のテキストを対象として、ある語を仮名で書くか漢字で書くかという、「表記」の観点から見直すことにある。 本年度は、合計3回(平成24年5月18日、8月27日、平成25年2月26日)の研究会を国文学研究資料館において実施し、各回4人の研究発表をもとにして有意義な討議を重ねてきた。また、平成24年9月24日には、イタリア・フィレンツェ大学文学部コンファレンスルームを会場として、「日本古典籍における【表記情報学】」と題して国際研究集会を開催した。6人の研究発表の後、活発なディスカッションを行った。この実施にあたっては、フィレンツェ大学の鷺山郁子教授とベネチア大学のアルド・トリニ教授の多大なるご協力とご支援をいただいた。 研究遂行上必要となるテキストとしての翻字本文の作成と、そのデータベース化も引き続き行っている。平成24年度は源氏物語の版本「絵入源氏物語」「九大古活字版源氏」等に関して作業を行った。「絵入源氏物語」は翻字データの編集を完了し、全本文をデータベース化した。さらに全巻全丁のカラー画像も整理し、文節に切った本文とその語を含む写本の当該画像の相互検索・表示が可能なデータベース化を完成させた。印刷物として発行予定の研究成果報告書には、この「絵入源氏物語」の本文と画像を収録したDVDを付す準備を整えた。今後は、さらに諸本や他の作品を追補し、作品研究の成果と共に、より有効な研究に資するデータベース化にも取り組んでいきたい。 さらに、写本や版本の翻字を通して、日本の古典籍が読める学生を育てることも意識して推進している。この若い力を、本研究課題で作成する翻字資料に傾注し、今後の古典文学への興味付けに資するものとし、大学共同利用機関としての国文学研究資料館ならではの研究者のネットワークを大いに活用したプロジェクトとして行きたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに、国内と海外における研究会を通して、多くの研究発表がなされてきた。それぞれの研究テーマに即して共同討議を重ねることで、問題点の所在と新たな知見が得られている。それらは、科研成果として報告書に掲載している。 また、研究遂行上必要となるテキストとして、国文学研究資料館所蔵の「正徹本」「絵入源氏物語」の翻字本文と写本の全丁画像を作成・整備し、文節に切った本文とその語を含む写本の当該画像の相互検索・表示が可能なデータベース化を完成させた。これも、予定通り順調に進捗しているものである。 このように、研究活動と資料作成が共に関連しながら進展していることから、当初の予定以上に着実に成果をあげつつ計画が遂行できている、と判断するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では従来の異文研究の成果を継承しつつも、「表記」に注目することにより、その表記情報分析に取り組んでいる。さらに今後は、国文学研究資料館の所蔵となった榊原本などの古写本や、古活字版・首書源氏物語など版本の翻字によるデータ化をもあわせて行う予定である。【表記情報学】という観点から、新たな諸伝本研究の資料集成を構築するためである。 平成24年度は、前年度までの研究活動を継承しつつ、新たな活動を展開した。これまで行ってきた表記情報の分析や翻字データの作成のほか、9月にイタリアのフィレンツェにおいて国際研究集会を開催し、国際学術交流を深めるとともに活発な議論を交わすことができた。また連携研究者として新たに2名の研究者が加わったことで、本研究をこれまでよりも広い視野と視点を持って進められるようになった。今後も国内外の研究者と連携して【表記情報学】の基盤構築に努め、古典文学の基礎研究へ寄与して行く所存である。 なお、これまで取り上げていなかった和歌や平安時代以降の文学作品の本文の調査にも、今年度からは着手する予定である。今後は、さらに調査研究の対象を拡げていくことにしたい。
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Research Products
(13 results)