2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本古典籍における【表記情報学】の基盤構築に関する研究
Project/Area Number |
22242010
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
今西 裕一郎 国文学研究資料館, 館長 (90046219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相田 満 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (00249921)
伊藤 鉄也 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (10232456)
野本 忠司 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (20321557)
江戸 英雄 国文学研究資料館, 研究部, 助教 (50290870)
海野 圭介 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (80346155)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国文学 / 表記情報学 / 本文研究 / 源氏物語 |
Research Abstract |
本研究は、日本古典文学作品における書写本文に着目し、ある語を仮名で書くか漢字で書くかという、「表記」の観点から諸作品間における表記態度の差異を見直すと共に、外部徴表ではなく書写された本文自体を基にして、作品の性格や素性の分析を試みるものである。 本年度は、合計3回(平成25年5月31日、8月29日、平成25年2月21日)の研究会を国文学研究資料館において実施し、各回4~5人の研究発表をもとにして有意義な討議を重ねてきた。 研究遂行上必要となるテキストとしての翻字本文の作成と、そのデータベース化も引き続き行っている。平成25年度は新しく国文学研究資料館の所蔵となった『源氏物語』(榊原本、全16冊)の翻字に取り組み、研究成果報告書に添付したDVDにその翻字データなどの諸資料を収録した。この写本は長らく所在不明となっており、『源氏物語大成』所載の翻字本文と一部の巻の影印が知られるのみであった。それが平成23年3月に国文学研究資料館の所有となったため、これを本科研で全16冊を翻字し、貴重な鎌倉時代の古写本本文をあらためて公開することにしたものである。この成果が【表記情報学】の構築や『源氏物語』の研究に資するよう、これからも研究に取り組んでいく。今後は、さらに諸本や他の作品を追補し、作品研究の成果と共に、幅広い研究に活用できる有効なデータベース化にも取り組んでいきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、国内と海外における研究会を通して、多くの研究発表がなされてきた。それぞれの研究テーマに即して共同討議を重ねることで、問題点の所在と新たな知見が得られている。それらは、科研成果として報告書『日本古典籍における【表記情報学】の基盤構築に関する研究I・II・III』に掲載している通りである。 また、研究遂行上必要となるテキストとして、国文学研究資料館所蔵の「正徹本」「絵入源氏物語」の翻字本文と写本の全丁画像に加えて、本年度は国文学研究資料館の新収資料である『源氏物語』(榊原本全16冊)を翻字した(画像については国文学研究資料館のホームページより閲覧可能)。これらの翻字データの作成・整備に関しては、文節に切った本文とその語を含む写本の当該画像の相互検索・表示が可能なデータベース化を実現している。これも、予定通り順調に進捗しているものである。 このように、着実に巻を重ねている研究報告書に盛られている研究活動と資料作成が、相互に関連しながら進展していることから、当初の予定以上に着実に成果をあげつつ計画が遂行できている、と判断するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では従来の異文研究の成果を継承しつつも、「表記」に注目することにより、その表記情報分析に取り組んでいる。本科研の最終年度となる平成26年度は、国文学研究資料館と学術交流協定を締結している実践女子大学所蔵の『源氏物語』「明融本」などの古写本の翻字を通して、これまでに蓄積したデータ化をさらに推進して行く予定である。【表記情報学】という観点から、新たな諸伝本研究の資料集成を構築するためである。 平成25年度は、前年度までの研究活動を継承しつつ、さらに貴重な鎌倉時代の古写本「榊原本」の翻字など、新たな活動を展開した。これまで行ってきた表記情報の分析や翻字データの作成はもとより、3回の研究会を通して【表記情報学】に関する問題意識を深めるとともに、活発な議論を交わすことができた。 今後も国内外の研究者と連携して【表記情報学】の基盤構築に努め、古典文学の基礎研究へ寄与して行く所存である。最終年度となる平成26年秋には、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学において国際研究集会を開催する計画を進めている。 さらに調査研究の対象を拡げていくなかで、これまで取り上げていなかった和歌や平安時代以降の文学作品の本文の調査にも着手している。これまでの5年間の成果は、研究成果報告書である『日本古典籍における【表記情報学】の基盤構築に関する研究IV』に集約して総まとめとする。
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Research Products
(19 results)