2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能にもとづく言語習得メカニズムの解明:学童期の横断的研究
Project/Area Number |
22242012
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
萩原 裕子 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (20172835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檀 一平太 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20399380)
星野 崇宏 名古屋大学, 経済学部, 准教授 (20390586)
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Keywords | 言語脳科学 / 事象関連電位(ERP) / 近赤外線トポグラフィ(NIRS) / 外国語学習 / 母語獲得 / 小学生 |
Research Abstract |
本研究はヒトの言語習得のプロセスを、脳機能イメージング法を用いて脳の発達という観点から明らかにすることを目的とする。文法機能に焦点を絞り、6歳から12歳までの学童を対象として、事象関連電位(ERP)と光トポグラフィ(NIRS)を同時併用した横断的研究を行った。今年度は、習熟度の異なる英語イマージョン教育を受けている小学校2、4、6年生約90名を対象として、各種英語能力テスト、認知能力テスト、言語・社会環境調査、脳機能計測データの取得を完了した。現在、脳データの解析手法の最適化を図りつつ、各種データの解析を進めている。刺激文としては、英語の句構造規則に従った正文と規則に違反した非文、及びフィラー文を用いた。これまでの予備的な解析の結果、ERP反応としては、句構造規則に違反した句の刺激提示後、150-300ミリ秒と200-350ミリ秒区間におけるF7,Fz電極、及び250-400ミリ秒区間におけるF7電極において主効果がみられた。この非文に対する前方左優位の陰性成分は、英語母語話者が句構造違反に示す早期陰性成分(ELAN)に相当すると考えられる。しかし、本実験の陰性成分はELANとしては開始潜時が僅かに遅く、さらに比較的長く続くことが特徴であり、このデータを元に、今後、外国語学習の熟達度と潜時との関連性を検討する予定である。NIRSデータの解析では、一般に用いられている成人の血流動態を仮定しているが、今後小学生の血流動態反応が成人の仮定と同等であるか否かも検証し、さらに解析を進める予定である。子供脳の外国語習得を可視化した研究は初めてであり、これらの成果は、学童期における言語発達の基礎資料となるもので、小学校における国語教育や、言葉の発達・学習障害の支援への貢献、さらには効果的な英語活動や、脳科学的な根拠に基づく英語学習法の開発へ道を開くものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、小学生の非母語文法機能の脳反応をみること、比較的新しい計測機器である近赤外線トポグラフィ(NIRS)を用いて文法課題を行っていること、さらにERP(脳波)-NIRSの同時計測、という3点において前例のない極めて新規性が高い研究である。そのため、実験プロトコルの開発からNIRSの解析手法の開発に至るまで探索的・試験的な要素が多く、各プロセスで条件の最適化等に多くの時間を要する。今回は、提示される刺激の種類やタイミングを予測できないようにした事象関連の刺激提示法を使用しているため、一般線形モデル(GLM)を使用した新たな解析方法の開発が必要である。予備的な解析を行いつつ、解析手法の最適化を図っている。これまでに、ほぼ予定通りのデータ数の取得が完了し、解析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
データ解析であるが、これまでに脳波データは順調に行われている。一方、近赤外線トポグラフィは比較的新しい計測器であり、かつERP-NIRS同時計測ということもあり、解析手法の最適化を進めている。この問題をクリアできれば当初の目標は達成できると考える。
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Research Products
(21 results)