Research Abstract |
この共同研究では,東アジア世界に位置する歴史的地域としての東シナ海,日本海,中国東北地方,琉球,朝鮮の5部分地域を,環東シナ海,環日本海沿岸域の相互の交流,衝突,融合,分立などを広義の「文化交渉」の実体としてとらえる。それが表象された「かたち」である建築,集落,土地システムと,技術体系,信仰や儀礼を,地理学,民俗学,建築学,歴史学の相互乗り入れによる学際的研究組織で,総合的かつ複眼的に研究することをめざす。 今年は,東シナ海域では長崎県生,月(捕鯨)と天草諸島(集落・キリスト教受容),日本海沿海では庄内平野と最上川流域(西回り航路,稲作の北進),南越前町河野浦(北前船拠点),中国東北地方では遼東河,黒竜江支流の松花江を含む東北平原(稲作の北進・粉食の北進と大衆化),済州島(集落立地),沖縄本島・八重山地域(集落と儀礼)などの個別/共同臨地調査を実施し,年2回(5月,11月)の全体研究集会を関西大学東西学術研究所で開催した。得られた知見としては,部分地域のなかで周縁として位置づけられる地域にみられる事象の分布を解釈しデータベース化すること,部分地域相互の交流におけるマルチスケールアプローチの必要性である。次年度に向けての課題として,各人,各班が詳細な実態調査が可能なモデル地域の選択と,共通的/異質的要素の研究者相互の共有である。また,一般への社会貢献として,文化の交流・交渉を北前船・西回り航路といわれる日本海沿岸の近世・近代の港の形態と機能,その背域,相互ネットワークを主眼とした比較モノグラフ研究が提起された。本共同研究は,若手研究者の育成をも一つの目的にしているが,2010年度に琉球,ベトナムをフィールドにした研究協力者3名が博士の学位を授与された。
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