2012 Fiscal Year Annual Research Report
権威主義体制と市場を媒介する法と政治--中国的メカニズムの解明
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22243001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 賢 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (80226505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高見澤 磨 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70212016)
石塚 迅 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (00434233)
坂口 一成 大阪大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10507156)
宇田川 幸則 名古屋大学, 大学院法学研究科, 教授 (80298835)
崔 光日 尚美学園大学, 総合政策学部, 教授 (60360880)
川島 真 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90301861)
石井 知章 明治大学, 商学部, 教授 (90350264)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 権威主義政治体制 / 市場経済 / 市民社会 / 司法改革 / NGO / 結社の自由 / 民主化 |
Research Abstract |
当初の計画にしたがい、文献収集、実態調査を継続しつつ、現地での訪問観察、聞き取り調査を行った。[I]政治-党=国家アスペクト、[II]経済-市場アスペクト、[III]国際-グローバリゼーションアスペクトという3つの方向から領域毎に研究を深化させるとともに、統合化のための理論枠組みについて検討を進めた。その結果、以下のように現代中国には独特なガバナンス構造があることが判明した。 30年間の改革開放によりすべてを包摂していた国家から、企業という主体が登場することにより、市場が独自の領域として析出された。巨大な国有企業が独占的地位を利用して、巨大な利益を得ているし、どの企業も地方権力と結びつくことで企業経営を安定させているのが常態であり、市場は政治権力と癒着、共棲関係にある(政資一体)。 他方で社会と見なしうる領域が、控えめながらも国家の枠をはみ出しつつある。国家機関と民間組織の間にはさまざまなグラデーションがあり、純粋な民間になればなるほど、その地位の合法性にはグレーな部分が出てくるという構造にある。つまり、草の根NGOとアンダーグラウンドな「黒社会」とは紙一重の関係にある。また、メディアと結社に対する権力的規制が依然として強い中国の市民社会にとって、とりわけインターネット世論が重要な役割を演じている。国家の側もある種の「社会」的なものを権力に有利な方向で利用しようとするアンビバレントなうごきもあり、社会を権力からの自律や権力への監視、牽制、抵抗、批判という視点からだけ捉えることができない。 市場や社会に対しても国家と一体化した共産党による統制の網がかけられようとしており、党は市場や社会に対するコントロールをけっして諦めてはいないどころか、近時は党組織の拡充を通じて制御力を強化しようとすらしている。今や党は国を超えた存在となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトは中国で形成され始めている「社会」に着目し、その実態を明らかにすることを通じて、権威主義的な政治レジームと市場経済がいかに接合され、高度な成長を支えているか、その構造を明らかにすることであった。この目論みは以下のような理由で成功を収めつつある。 1.「社会」を支える法的な枠組みが不十分な現状では、「社会」は国家ないし市場と共棲し、連携しながら、身の置き所を定めることに腐心している。国家=党権力との決定的な対立を避けつつ、それぞれの団体の目的を達成すべく、妥協と遠慮、調整、コミュニケーションを繰り返している。こうした非制度的なバランスのうえにしみ出す独特な「社会」の構造の発見に至っている。 2.改革開放の中で市場が析出し、一定の自立的な社会が形成され始めたことが、必ずしも党による統制が緩んでいるわけではないというアンビバレンスな状況を明らかにしつつある。党支部の設置や選択的法執行と呼ばれる恣意的な取り締まりをするなど、党は資本やNGOへの制御を断念していない。党は国の枠を超えて、市場や社会へも浸透工作を展開しているのであり、党のカバー領域は拡大する傾向にある。 3.他方で、インターネット世論の勃興により、党の制御を完全に貫徹させることが事実上、不可能になりつつある現実が浮き彫りになってきた。法的正当性の弱い「社会」はインターネットを通じて横の連携をとり、ギリギリのところで生存を図ろうともがいている。現代的な技術が独特の市民社会形成に大きな可能性を与えていることが分かってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
以下のような内容を中心として、これまでの既定方針にそって研究を継続して進めることになる。1.研究代表、研究分担者それぞれの分担事項に関する文献の収集、情報の解析、整理といった基礎的な作業を継続する。2.できる限りスケジュールを合わせて、中国での数名による実態調査を継続して実施する。広東での労働NGO、上海での権力に近い立場にあるNGO、環境問題や差別問題に取り組むNGOなどを予定している。また、全般的な状況、理論的な把握については研究者(王名清華大学教授など)へのインタビューにより軌道修正、補充を図る。3.2013年7月に日中労働法、労働関係シンポジウムを開催し、労働現場に生じている現実をめぐって議論を行う。中国から常凱教授(中国人民大学)など労働法、労働問題の代表的な専門家を数名程度招へいする。労働法シンポの成果は活字での公表を進める。4.研究のとりまとめに向けて、研究代表者および分担者においてそれぞれ論文執筆の準備を進める。
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Research Products
(46 results)
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[Journal Article] Chap.19: China2012
Author(s)
KAWASHIMA, Shin
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Journal Title
FASSBENDER, Bardo & PETERS, Anne (eds.), The Oxford Handbook of The History of International Law (Oxford University Press)
Volume: ――
Pages: 451―474
Peer Reviewed
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