2012 Fiscal Year Annual Research Report
公正取引市場の実現を目的とする消費者の集団的利益救済・予防システムの総合的構築
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22243007
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
千葉 恵美子 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70113587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 秀弥 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30364037)
酒井 一 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70248095)
丸山 絵美子 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80250661)
鈴木 將文 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90345835)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 集団的消費者利益 / 消費者団体訴訟制度 / 適格消費者団体 / 集合訴訟制度 / 経済的不利益賦課制度 / 公法・私法協働論 / 消費者法 / 競争法 |
Research Abstract |
平成24年度は、全体研究会を4回開催した。全体研究会では、「団体訴訟の実体法的基礎-消費者法・環境法と公私協働の視点から」「集団的消費者被害と差止請求権 -原理的・具体的課題の整理と展望-」「消費者団体による差止請求と集団的損害賠償制度との関係-消費者団体への財政支援の立場から-」「競争法と民事責任-競争法違反行為と損害論、独占禁止法24条の差止請求を中心に-」の各テーマで研究報告・討議が行われた。上記研究会では、差止請求権と団体訴訟という二つの観点から、民法における差止請求権、独禁法における損害賠償請求権および差止請求権、環境法における団体訴訟との比較検討を行った。これに加えて、市場のグローバル化に伴って国境を超えた消費者取引が多数生じていることから抵触法上の問題について、投資家が受領した損害賠償課税を中心に消費者利益の実現に伴う税法上の問題についても、意見交換をおこなった。 また、実体法グループは、平成23年度日本消費者法学会のシンポジウムにおいて行った研究報告を学会誌『消費者法第4号』において公表した。 さらに、実体法グループと手続法グループとの間で研究会を2回実施した。民事実体法・独禁法・行政法グループは、すでに、集団的消費者利益を①集合的利益、②拡散的利益、③社会的利益に類型化して、公正・簡便で時宜を得た効果的な紛争解決及び救済システム・予防システムのあり方を検討してきたが、民事実体法では①②の実現、競争法では②③の実現、行政法では①②③のいずれもが問題となること、これに対して、民事訴訟法分野では、従来、①を中心に少額の多数被害を中心として議論が展開されてきたことを明らかにし、実体法グループと手続法グループとの共通討議の場として、①②を取り上げ、実体法と手続法両面から、集団的消費者利益の実現のための制度設計にあたっての課題と展望について検討を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、消費者に集団的に発生する財産的利益の侵害について、公正・簡便で効果的な紛争解決及び救済システム・予防システムのあり方を解明することを目的としている。 平成22年度~平成23年度の2年間で、実体法のグループは、日本消費者法学会のシンポジウムなどで研究報告を行うとともに、雑誌論文等を通じて共同研究の成果を公表し、実体法のグループによる「集団的消費者利益の類型化論」は多くの関心を集めている。 集団的消費者利益が侵害される態様については、事業者の行為によって市場から潜在的需要が喪失する場合など、より公的利益に接近した問題領域がある一方で、個人的利益の集合体といえる問題領域のように、より個人的利益(私益)に近接する場合があることから、平成23年~平成24年度は、民事実体法・行政法・競争法の各領域から、集団的消費者利益の類型化に対応した利益実現のあり方を学際的に検討し、どのような法制度の組合せが理論的・実務的に可能かを解明してきた。 さらに、平成24年度は、「差止請求権」「集団的利益の実現」という二つの観点から、環境的利益など集団的利益が問題となる近接する法領域との異同について検討を加え、集団的な「消費者利益」の特色を解明する作業を行った。また、すでに法案の提出が閣議決定された、いわゆる「集合訴訟制度」についても、実体法グループと手続法グループとの間で、民事裁判を通じて集団的消費者利益を実現する際の理論的・実務的問題について共同研究が進展している。 加えて、「集団的消費者利益の類型化論」の展開によって共通の議論の土俵でき、多くの連携研究者の参加によって、これまで検討されたことがなかった抵触法・税法・刑事法領域からの集団的消費者利益の実現に伴う理論的課題についても研究が行われた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究の最終年度となることから、4年間の研究成果を『集団的消費者利益の実現と法の役割』(商事法務)に取りまとめ、平成25年度中に刊行する予定である。 本研究の研究分担者だけでなく、本研究の全体研究会であるライフ・イノヴェーション研究会に参加された連携研究者の研究成果についてもあわせて公表する。本研究の全体テーマである「公正取引市場の実現を目的とする消費者の集団的利益救済・予防システムの総合的構築」という観点から、民事実体法・行政法・競争法・民事手続法・刑法・刑事訴訟法・抵触法・税法の各分野から30本の研究論文の掲載を予定している。 これに加えて、適格団体による差止訴訟については、消費者法領域以外でも環境法分野等でその応用可能性が検討されていることから、適格消費者団体による差止訴訟、および、国会に法案の提出が予定されている「集合訴訟制度」について、民事裁判を通じて集団的利益を実現する際の理論的・実務的問題を解明することを予定している。上記の点については、実体法グループと手続法グループとの間で、ワークショップを開催し、上記の書籍とは別途、学際的な研究成果の公表を予定している。
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Research Products
(25 results)