2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22243008
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
二宮 周平 立命館大学, 法学部, 教授 (40131726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 通裕 関西学院大学, 法学部, 教授 (00131508)
村本 邦子 立命館大学, 応用人間科学研究科, 教授 (70343663)
渡辺 惺之 立命館大学, 法務研究科, 教授 (30032593)
櫻田 嘉章 甲南大学, 法科大学院, 教授 (10109407)
中野 俊一郎 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30180326)
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Keywords | 家事紛争の解決過程 / 当事者へのサポート / 離婚後の親子の交流 / 国際的な子の奪取 / DV被害者の支援 / 民事手続 / 法と心理の協働 |
Research Abstract |
2011年度は、臨床心理・対人援助と法学の連携という課題について、ドイツ・シュトゥットガルトで家裁・高裁から心理鑑定を依頼されているカップ博士(心理学)の研究会「複雑な家族問題のために子どもを中心にした解決を創造する」を11月19日に、ワークショップ「家事事件における子どもと家族の心理アセスメント」を11月20日に開催した。また離婚後の親子の交流をサポートする民間団体(Vi-Project)代表の桑田道子氏に、「面会交流の心理的な支援」というテーマで、臨床心理士で応用人間科学研究科教授の団士郎氏に「家事調停と臨床心理の応用」に関して研究会を1月13日に開催した。 比較法としては、ハノイ国立大学のハン教授に「父母が離婚した子の権利」、「ベトナムにおけるファミリー・バイオレンス」と2つのテーマで、1月13日に研究会を開催した。それに先立ち、12月25~28日、渡辺、酒井がベトナムを訪れ、ハン教授と共同研究について打合せをした。2012年2月29日~3月6日まで、渡辺、村本、二宮、佐々木、松久、榊原、桑田7名が、ドイツ・シュトゥットガルト、ウィーンを訪問調査した。ドイツ家事事件手続法改正により、家裁、少年局、心理相談所、民間の子ども保護連盟、手続補佐人が連携し、合意による紛争解決を支援する仕組みを導入したことから、実際の連携のあり方を調査し、ウィーンでは家事事件弁護士を訪問し、同じく合意解決を目指す上での課題をについて、またドイツ型の制度を導入したオーストリアの状況についてツェルマーク・ウィーン大学教授にヒアリング調査をした。 これまでの比較調査を踏まえた日本の家事調停実務の改善の方向性について、二宮が論文を公表した(「当事者支援の家族紛争解決のモデル構築」ケース研究307号5~34頁)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2010年9月、2012年3月の2度にわたるドイツ訪問調査及びカップ博士を招聘しての臨床心理からのアプローチ研究により、当事者の合意による紛争解決に向けた必要な課題が明らかになった。それは、当事者への情報提供、当事者の心理的な状況に対応した相談体制、各機関の連携、相談・家事手続における子の意思の尊重であり、それらを家裁が中心となってコントロールすることである。しかし、こうした機能が各国の法整備の状況に依拠することも、先進的なオーストラリア、韓国、途上にあるベトナム、日本から明確になった。必要な整備とは何か、それを支えるにはどのような法規定が不可欠か、方向性を見出しつつある。さらに国際的な子の奪取に関するハーグ条約の批准、国内実施に向けて、現実的な解決を図る上で、こうした紛争解決の手法が有益であることも確認されたので、具体的な仕組みを考える段階に至っている。 臨床心理からのアプローチは、研究会の開催とそれに向けた準備作業の中で進められつつあるが、現段階では、法学が臨床心理の成果を取り込むとすれば、法の専門家が当事者と対応する際に、対人援助の基本的な手法を修得することであり、臨床心理が法学を取り込めるとすれば、対人援助をする際に、段階的な法的解決を一つの目安にステップを踏むことの可能性が生まれることが確認されたこと、法的な解決を困難にする当事者の心理的ケアは心理の専門的対応が不可欠であり、このレベルでは機関連携の必要性が認識された。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、国際的な子の奪取に関するハーグ条約の国内実施に向けて、当事者を支援して合意による解決を図ることが、特に子の利益を確保する上で有効であることが明確になったので、この手法を用いているドイツやオーストリアの実務及び運用の実情を調査し、日本で実施可能な方法を開発していく。そのためにドイツの裁判官を招いてのシンポジウムないし研究会を開催し、成果を共有する。 第2に、ドイツの手法を取り入れたオーストリアの現状を調査し、取り入れる場合の課題を明らかにし、日本への可能性を追求する。同時に、当事者への情報提供から、合意形成のための相談所システムを導入した韓国の実情について、追跡調査を行い、家裁調査官制度を持ち日本と類似する家庭裁判所制度・家事事件手続法の下で、可能なことを具体化する。 第3に、臨床心理との融合をどのレベルで行うか、行うとすれば、どのように行うのか、臨床心理からのアプローチに関する研究をより深めること、民間の各機関、児童相談所などとの機関連携について、日本の各機関のヒアリングを行う中で、システム構築の方向性を見出していく。 2013年度末の成果公表へ向けて、これまでの研究成果を共有化し、解決モデル構築へ向けて具体的なプロセスを明確化する。
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Research Products
(82 results)