2011 Fiscal Year Annual Research Report
討論型世論調査による民主主義における「世代を超える問題」の解決策の模索
Project/Area Number |
22243014
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
曽根 泰教 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 教授 (10051905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉村 雅敏 慶應義塾大学, 総合政策学部, 准教授 (40327177)
古谷 知之 慶應義塾大学, 総合政策学部, 准教授 (60334322)
柳瀬 昇 駒澤大学, 法学部, 准教授 (90432179)
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Keywords | 民主主義 / 熟議 / 世論調査 / 政治参加 / 世代間問題 / 国際研究者交流 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
本研究は、「討論型世論調査」(Deliberative Poll:DP)という社会実験を実施することにより、民主主義において解決が難しいとされている「世代を超える問題」(将来世代と現世代との関係をめぐる問題)を解決できるのかについて検討するものである。 平成23年2月~3月に全国3,000サンプルの無作為調査を行い、その回答者(2,143人、回収率71%)に対して、2泊3日の討論フォーラムへの参加者を募ったところ、127名が参加した。この間に東日本大震災があり、参加者の出席率が予想より低かったが、代表性を損なうことなく、全国から参加者を集めることができた。平成23年5月27日~29日に、慶應義塾大学三田キャンパスで、討論フォーラム「年金をどうする~世代の選択」を開催した。ここでは、小グループ討論と全体会議(専門家のパネリストへの質疑)の組み合わせを、基礎年金のあり方、所得比例年金のあり方、年金支給開始年齢の引き上げの3つの論点について実施した。事前の全国世論調査、フォーラム前とフォーラム後のアンケート調査で、どのように意見の変化が起きたかを確認することができ、その原因分析や「信頼性」の重要性の新たな発見など、本研究の目的はほぼ果たすことができた。 さらに、今回実施した討論型世論調査の調査結果とDPの理論的な問題点(世代を超える問題や国境を越える問題など民主主義の中で解決が難しい問題)を議論するために、平成24年1月20日に、慶應義塾大学三田キャンパスで、国際シンポジウム「討論型世論調査による熟議民主主義:世代を超える問題を解決できるか」を開催した。国内外の研究者による講演とパネルディスカッションを行い、130名の出席者を得て、活発な討論を行うことができ、今後の討論型世論調査研究の方向性も見出すことができた。なお、討論フォーラムやシンポジウムの模様は、新聞等でも報道された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
震災等の影響により参加者は当初予定したよりも少なかったものの、当初の計画どおり、全国からさまざまな世代の参加者を得て、討論フォーラムを円滑に実施することができた。また、当初、小規模のものを予定していた研究成果の発表会は、国内外の研究者を招聘し国際シンポジウムとして大規模な形で開催することができた。これらによって、今回の年金をめぐる討論型世論調査の位置づけと、国際的な討論型世論調査研究の方向づけにも貢献することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、次の3点について、研究を推進していく予定である。 1)平成23年5月までで実施した討論型世論調査の結果を分析し、正式な報告書をまとめるとともに、学会発表や学会誌などに研究成果を発表する。 2)討論型世論調査の理論的な問題点の整理、討論型世論調査を政策形成に活用することの意義、方法、限界などを検討する。 3)討論型世論調査の議題として、公的年金制度のあり方以外にどのようなものがありうるかを検討し、その実施を検討する。
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Research Products
(4 results)