2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22244005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大鹿 健一 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70183225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮地 秀樹 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40385480)
相馬 輝彦 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (50154688)
和田 昌昭 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (80192821)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | クライン群 / タイヒミュラー空間 / 離散群 / 双曲幾何 / 3次元多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
大鹿は,Bers境界の位相構造の解明,指標多様体の中のKlein群の変形空間の相対的位置,Klein群の極限集合の中のPatterson-Sullivan測度の剛性,Heegaard分解に伴う写像類群の部分群の双曲性とそのprojective lamination spaceへの作用などについて研究した.Bers境界については,Thurstonの予想であった,そのi位相構造の特徴づけを,修正をした上で,完全に解決した.指標多様体については,W. Jeon, I. Kim, C. Lecuireと共同で,変形空間の境界で原始的安定になる点の完全な特徴付けを与えた他,変形空間の全ての点が閉多様体に対応する外点の集積点となることを示した.極限集合のP-S測度については,W. Jeonと共同で,同型なKlein群は等角共役でない限り,Cannon-Thurston写像によって,P-S測度は互いに特異的になることを示した. Heegaard分解に伴う写像類群の部分群については,作間誠と共同で,この群がGromov双曲的であること,projective lamination spaceへ空でない不連続領域を持って作用することを示した. 宮地は,タイヒミュラー空間の距離空間としての理解のため,タイヒミュラー距離のグロモフ積と交点数関数の関係を鑑みて距離空間に作用する新しい写像の概念を導入した.ここで定義された写像はグロモフ双曲空間に対しては境界に拡張するための条件を持つ写像であり自然な写像である. 距離空間の一般論を展開して,タイヒミュラー空間の場合に適応して写像類群の新しい特徴付けを与えた. 単位円板からタイヒミュラー空間への正則写像のについて研究して新しい剛性定理を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Klein群の変形空間の研究,Teichmuller空間の漸近構造の研究は着実に成果を上げている.当初から目標としていた,変形空間の位相構造の解明については,特にBers sliceの構造解明の部分での成果が上がり,Thurstonの予想が元の形では誤っているが修正した上で,正しいことを証明することができた.Teichmuller空間の漸近構造については,Gromov幾何の概念を導入することにより,とても見通しのよい結果が得られた. これらについては,論文発表も進んでいる.また海外の研究集会からの招待も多く,着実に成果発表を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
Klein群の変形空間の研究はさらに,境界の特異点の記述をgeometric completionにより明らかにすることによって,完成させようと考えている.一方で今後これらの結果を,3次元多様体の指標多様体の研究や,写像類群,translation surfaceの変形空間の幾何などへの応用を目指した方向へ研究を発展させようと考えている. 指標多様体は変形空間の概念の自然な拡張であり,この研究は,3次元多様体の研究としても大変重要である.geometrisation定理の完成後の3次元多様体論は,3次元多様体の相互の関係を記述することに重点が移っている.体積やその拡張であるChern-Simon不変量の振る舞いなどは重要な研究対象であるが,これらの研究のためには,3次元多様体全体の集合を埋め込む空間を作ることが極めて有用である.このような空間として役立つのは指標多様体である.この研究は今後重要性を増していくことが期待される. また写像類群にたいして,3次元多様体からくる重要な部分群の構造を研究することが昨今重要な課題となっている.この研究にはこれまでのKlein群の変形空間での成果が大きく役立つことが期待される.
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Research Products
(18 results)