2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22244071
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
大河内 直彦 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, プログラムディレクター (00281832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 桂太 東京工業大学, 総合理工学研究科, 助教 (70323780)
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Keywords | 物質循環 / 窒素サイクル |
Research Abstract |
平成23年度は,かつて国際深海底掘削計画によってアフリカ,ナミビア沖(南東大西洋,ODP Site 1O82)で得られた堆積物試料(鮮新世~現在)中に含まれている植物プランクトンのバイオマーカー,クロロフィル分解生成物の窒素安定同位体比などを中心に測定した。堆積物中から,クロロフィルαだけでなく,フェオフィチンα,パイロフェオフォルバイドαおよびステリルクロリンエステルなどを単離・精製し,その窒素安定同位体比を微量試料用にチューンナップされた当研究室の同位体質量分析計を用いて精密に測定した。その結果は,鮮新世以降それらのほとんどは-2~+3%の範囲にあったことを示した。時系列で比較すると,第四紀よりも鮮新世の方が1~2%高い傾向が明らかになった。この結果は,現在典型的な湧昇海域として知られているナミビア沖において,湧昇が強まったのが鮮新世後期であることを強く示唆している。他方,こういった研究に対し,従来からの手法である堆積物中に含まれる全窒素の同位体比を測定した結果は,過去300万年間を通して徐々に窒素同位体比の上昇する傾向がみられる(約1%)。全窒素の同位体比は,植物プランクトンが固定した窒素のみならず,動物プランクトンや高次捕食者に由来する窒素を多く含むうえ,さらに分解過程において大きく変質を受けることが知られ,その地質記録としての信頼性は低い。したがって,今回の結果はクロロフィルの窒素同位体比を測定する意義も示したことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は,空白時間域のひとつであった第三紀の堆積物の分析を行うことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,本研究の最終年度にあたる。IODPによって南極海で採取された堆積物中に含まれるクロロフィル分解生成物の窒素同位体比分析を行い,過去数百年間の海洋表層における栄養塩環境を復元する。また,これまでの成果をまとめ,総括を行う予定である。
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Research Products
(4 results)