2011 Fiscal Year Annual Research Report
開殻化合物を用いる新しい有機エレクトロニクスの発展
Project/Area Number |
22245021
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿波賀 邦夫 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (10202772)
|
Keywords | 有機エレクトロニクス / 有機半導体 / 有機トランジスタ |
Research Abstract |
本研究では、有機ラジカルなどの開殻分子に対する製膜法や電極との接合作製技術を高めながら、これらがつくる絶縁相(パイエルス相、電荷秩序相およびモット相)に対して、積極的に光照射や電子・イオン注入を行うことによってその基底状態を揺さぶり、電子やエネルギー移動を通じて時空間発展する非線形現象を新しい電子機能発現の原理ととらえ、開殻化合物を利用した革新的な有機エレクトロニクスを構築することを目的としている。 フタロシアニン(Pc)を代表とするポルフィラジン化合物は、安定性に優れ、有機エレクトロニクスにおいてきわめて重要な化合物群である。我々は、このマクロ環の外側にチアジアゾール基をもつ化合物群M-TTDPzの研究を進めており、通常のPcがp型半導体特性を示すのに対して、この物質はn型特性を示すことを明らかにしている。今年度は、TTDPzの常磁性誘導体であるVO-TTDPzの研究を実行し、結晶成長や構造解析、磁気測定を行った。その結果、構造が異なる2相の現れる多形現象を発見し、この両相が、この分子の強いスピン分極を反映して強磁性的な分子間相互作用をもつことを見出した。さらに、薄膜作製からイオン液体をゲートとする薄膜トランジスタ特性を調べたところ、2.8×10-2cm2V-1s-1といった、薄膜としては極めて高い移動度をもつことが分かった。p型半導体であることを確かめたVO-Pcと組み合わせてインバータを作製したところ、ここでも閉殻ポルフィラジンを凌駕する特性が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
開殻化合物を利用した革新的な有機エレクトロニクスを構築することを目的としているが、イオン液体をゲート誘電体に用いることによって、薄膜としては世界最高水準の移動度をもつn型トランジスタ特性を引き出すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、イオン液体を利用することによって良好なn型トランジスタ特性を引き出すことに成功した。今後は、光電流とイオン液体結びつけた光学セルを作製し、両者の相乗効果によって、新しい光有機エレクトロニクスを開拓する。
|
Research Products
(8 results)