2012 Fiscal Year Annual Research Report
胚発生と対応する幹細胞群を活用した、神経系原基形成の遺伝子制御ネットワークの研究
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22247035
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 寿人 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (70127083)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2014-03-31
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Keywords | EpiSC / 転写制御ネットワーク / 神経系原基 / マウス胚 / Zic因子 |
Research Abstract |
哺乳類の体は、着床後にできるエピブラストから発生する。エピブラストから原腸陥入期に最初に生み出される組織である神経板は、成立時にすでに領域化されており、それがさらにサブ領域に分れて発生する。本研究では、神経板の生成と領域化の基盤をなす遺伝子制御ネットワークを明らかにする。エピブラストを株化したEpiSCsを活用する。EpiSCsから培養条件下で神経板のサブ領域に対応した細胞集団を発生させて、それらの細胞状態を規定したり、あるいは次の段階に発生をすすめるための遺伝子制御ネットワークを明らかにする。 本年度の研究で次の成果を得た。 (1)Zic属転写因子が、神経板の発生に必須の制御機能を持っていることを明らかにした。Zic2/3は、神経板発生の中核となる転写因子の発現を活性化するだけでなく、中胚葉系、内胚葉系の組織の発生に必須な転写因子の発現を強く抑制する。エピブラストから特定の系列の体細胞組織が発生するためには、他の細胞系列への発生を抑制する機構が重要である。 (2)前部神経板の中の再前端のサブドメインでは、マウス8日胚の段階で転写因子Hesx1が発現される。この状態の細胞をlive imagingによって検出するためのレポーター遺伝子を開発した。Hesx1の5’側に位置するエンハンサーによってEGFPを発現させることにした。このレポーターを用いて、EpiSCから開始した神経板発生の2日目にHesx1-EGFPを発現させる条件を探した結果、Dkk1の強制発現によってEpiSCに内在のWnt3の活性を低下させると、効率よく前部神経板の再前端のサブ領域に対応する細胞群を発生させることができた。実際7.5日胚では、Dkk1は前部神経板の再前端を裏打ちするvisceral endodermで発現されており、この発現が前部神経板の再前端サブドメインを成立させていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Zic属転写因子が、エピブラストから前部神経板を発生させる転写制御で重要な役割を果たしていることとともに、その重要な制御機能が、内胚葉・中胚葉系を抑制することにあるという重要な発見をした。 EpiSCから前部神経板の再前端のサブドメインを発生させるための条件を明らかにし、それが実際の胚発生における制御機構に対応していることを明らかにした。 このように、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)EpiSCから神経板を生ずる過程で、Sox2,Pou5f1などの主要な転写因子がゲノム上のどの遺伝子群を制御標的にし、また発生過程で制御標的遺伝子を変化させるのかを、ChIP-Seq解析やマイクロアレイ解析を用いて研究する。 (2)昨年度の研究成果をふまえて、Wntシグナルのレベルによる神経板の領域化の機構に注目して研究をすすめる。特に、EpiSCに内在のWntシグナルによるautocrine的な制御を阻害したときに出現する、神経板最前部の領域特性を実現する遺伝子制御ネットワーク、また、比較的高いWntシグナルレベルのもとで出現する体軸幹細胞状態を実現する遺伝子制御ネットワークに焦点を当てた解析を行う。 (3)EpiSCから特定の体細胞系列の発生が開始される際には、他の体細胞系列への発生を抑制する機構が重要である。それらの抑制機構の研究を発展させる。
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Research Products
(6 results)