2012 Fiscal Year Annual Research Report
システムバキュロウイルス学の幕開け -タンパク質超発現システムの解明と再構築-
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22248003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伴戸 久徳 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20189731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 昌直 基礎生物学研究所, 発生生物学研究部門, 助教 (20517693)
日下部 宜宏 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30253595)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バキュロウイルス / 遺伝子欠損ウイルス / トランスクリプトーム / タンパク質発現 / システム生物学 |
Research Abstract |
本年度は、まず、野生型ウイルス感染細胞の解析結果から選抜した遺伝子欠損ウイルス(40種類)を用いて、それら40遺伝子によって構成されるウイルス遺伝子ネットワークを推定した。このネットワークモデルは(1)既知のバキュロウイルス間の制御関係や(2)複製などの特定の既知機能に関わる遺伝子がモジュール構造を作る、などの生化学的解析などで得られた既知情報を含んでおり、実際のウイルス遺伝子ネットワークを反映したものが推定されていると考えている。 また、複数遺伝子ノックアウトウイルスを作製し、ウイルス遺伝子の協調的機能の解析を行ったところ、複数の遺伝子欠損により極端に多角体発現能を喪失する場合や、多角体発現量が大きく向上する事例が認められた。これらの組換えウイルスは、多角体発現に関する遺伝子ネットワークモデルを補強する上で貴重な材料となり得る。 BmN4細胞でノックダウンした際に多角体発現を向上する宿主遺伝子の内、choline/ethanolamine kinase、TIMEOUT/TIM-2 protein、U2-associated SR140 proteinの3遺伝子において、多重RNAi及び、多角体発現能に異常が認められるノックアウトウイルスの組み合わせで解析を行った。多角体プロモーター制御下にあるルシフェラーゼ活性を指標にしたところ、3遺伝子の多重RNAiでは相乗効果は認められなかったが、BroB欠失ウイルスとU2-associated SR140 proteinの組み合わせで最大3倍の相乗効果が認められたことから、同宿主遺伝子がウイルス感染防除に大きな役割を担っていると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、ウイルス及び細胞のトランスクリプトーム解析及びタンパク質発現特性解析のためのプラットホームを確立した。本年度は、野生型ウイルス感染細胞の解析結果から選抜した遺伝子欠損ウイルス(40種類)を用いて、それら40遺伝子に構成されるウイルス遺伝子ネットワークを推定した。このウイルス遺伝子ネットワークモデルは複製、転写などの既知の機能に関わる遺伝子がネットワーク上で離れており、モジュールとして各機能は比較的独立していると推定されている。この結果から各モジュールに属するウイルス遺伝子操作によってウイルス感染に関わる各機能を独立に制御できる可能性が示唆された。また、組換えタンパク質発現向上に関わる宿主因子も組換えタンパク質発現能の異なる細胞株における野生型ウイルス感染細胞mRNA発現プロファイルから同定されており、この因子がウイルスネットワークにどのように関わるかを推定する基盤が構築された。これにより、ウイルスベクターの改良方策をデザインするためのもう一つの要素であるウイルス-宿主遺伝子ネットワークモデルを構築する基盤が整った。今後、このモデルを検証しつつ有用タンパク質発現効率の改善に着手出来る段階に入ったことから、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)野生型ウイルス感染細胞の解析結果から選抜した遺伝子欠損ウイルス(40種類)を用いて、それら40遺伝子で構成されるウイルス遺伝子ネットワークを推定したので、このネットワークモデルの検証を中心に進める。まず、ウイルス遺伝子過剰発現コンストラクトや複数遺伝子をノックアウトした組換えウイルスの作製・表現型解析を行う。これらの組換えウイルス表現型検証データを元にネットワークモデルからの推定方法や仮説構築の根拠を更新し、ネットワーク情報を元にしたウイルスベクターの改良を汎用化する基盤技術の構築を目指す。 2) BmN4細胞でノックダウンした際に多角体発現を向上する宿主遺伝子についてそれらの間のgenetic interactionを調べる。また、それら遺伝子ノックダウン細胞におけるウイルス遺伝子の発現を測定し、多角体発現亢進におけるウイルス・宿主遺伝子発現の挙動を網羅的・定量的に解析する。この解析から宿主遺伝子の作用点を推定し、多角体発現亢進させるシステム挙動を明らかにする。
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Research Products
(6 results)