Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水山 高久 京都大学, 農学研究科, 教授 (00229717)
里深 好文 立命館大学, 理工学部, 教授 (20215875)
堤 大三 京都大学, 防災研究所, 准教授 (40372552)
宮田 秀介 京都大学, 防災研究所, 助教 (80573378)
佐山 敬洋 土木研究所, 水災害リスクマネジメント国際センター, 研究員 (70402930)
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Research Abstract |
山地斜面内部の水文過程は長期的な地形発達とともに変化するが、外的要因により比較的短期間で劇的な変化が起こる場合があり,予測困難な崩壊発生の要因の一つと考えられている。比較的短期間に水文過程が変化する要因として,水流によるパイプの発達や閉塞,斜面変形による基岩の亀裂発達などが指摘されている。しかし,局所的に起こる水文現象の変化を把握できるほど高密度に水流観測をした例は少なく,実斜面で起こる時間変化の詳細な観測例は無い。そこで本年度の研究では,まず,表層崩壊の発生が予測される斜面に高密度かつ広域にテンシオメータを設置し,土層内の水流挙動を集中的に観測した。その結果,基岩湧水,飽和帯水層,降雨時の選択流といった不均質水流を直接観測できた。さらに,降雨時の選択流路が発達・拡大し,斜面の水文過程が変化する様子を詳細に把握できた。 次に,表層崩壊や土石流のハザードシステムに広く使われている「ブロック集合モデル」の問題点について考察した。モデルの検証を目的として詳細な水文観測を行った結果,雨水の風化基岩への浸透と,流域末端部における基岩からの湧水が,重要であることがわかった。このような流域に,既往のブロック集合モデルを適用したところ,土層内の地下水位変動の再現精度が低くなった。しかしながら,地形に依存した浸透水の集中が起きやすい箇所にある既往崩壊地については,妥当な安全率の低下が予測された。これは,降雨中には土層内部の雨水流動の重要性が無降雨時に比べて高くなるためであるが,モデルによる地下水位絶対値の再現精度が高くないことから,崩壊の発生を正しく予測できている保証は無いと考えられた。このことから,水文プロセスに関するモデルの検証が成されていない段階では,計算により得られた斜面崩壊危険度は,地形・土層厚・降雨波形などの各種要因を統合化した,一種の指標と見なす方が妥当であると考えられた。
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