2011 Fiscal Year Annual Research Report
科学および地域の史的観点に立つイスラム問題の比較分析-中東と東南・中央アジア-
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22252001
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
北村 歳治 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (00329153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 作治 早稲田大学, 国際教養学術院, 名誉教授 (80201052)
店田 廣文 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (20197502)
桜井 啓子 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (70235216)
山崎 芳男 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50245263)
長谷川 奏 早稲田大学, 総合研究機構, 上級研究員 (80318831)
及川 靖広 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70333135)
鴨川 明子 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40386545)
高橋 謙三 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (50377470)
岡野 智彦 (財)中近東文化センター, その他部局等, 研究員 (40260145)
近藤 二郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70186849)
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Keywords | イスラム / IT / 科学技術 / 系譜研究 / 地域比較研究 |
Research Abstract |
本研究では、系譜研究と地域比較研究の2つを分析の主軸に据えている。系譜研究では、ベナキ博物館所蔵のラスター彩陶器の研究が行われた。一方、地域比較研究では、東南アジアのベトナムにおいて、歴史的なイスラムの後退の現象が顧みられ、インドネシアとマレーシアでは、ICT開発のあり方に関する相互比較が行われた。中東のエジプトでは、開発と文化遺産保存の相克の現状が報告され、イランでは、オーストリア科学アカデミー研究センターの動向に関する報告があった。 日本国内で開催したシンポジウムに関しては、「アラブの春」とメディアの問題を扱った報告と欧州復興開発銀行(EBRD)の近年の活動から伺われる経済動向の報告を中心とする討議が行われた(第11回シンポジウム・イスラムとIT)。 海外ワークショップに関しては、当初は、イランにおいて、日・イランの研究者による会議を行う予定であったが、同国を取り巻く環境が不安定だったために、2012年11月5日にインドネシアのジャカルタの国立イスラム大学においてシンポジウム “A Decade IT Development in Islamic Economy and Society in Indonesia” を行った。コマルディン学長の「ITによるインドネシア社会の変化」のスピーチの後、第1セッションで、長谷川奏氏が日本におけるイスラム関連教育の経緯と現況を紹介した。第2セッションでは、高橋謙三氏が情報通信分野におけるインドネシア留学志望者と日本側の受入れ体勢の問題を取り上げ、また加納貞彦氏は、ヘルスケアと高齢者ケアにおけるITの適用について、将来の方向としてのUbiquitous Healthcare - RHIN extended to home and mobile-care のスキームの議論を展開し、それぞれインドネシア側からの関連発表と質疑が続いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2010~2012年に起こった「アラブの春」といわれる中東の政治改革は、それ自体が本研究における大きな課題の一つになるが、中東政治の不安定化、治安の低下という点においても、本研究の遂行に影響を与えることとなった。平成23年度は、もともとイランのテヘラン大学と共同でワークショップを開催する予定であったが、安定的な状況が見込めないことから、会議の実施を延期し(繰越金による対応)、平成24年度に代替の会議をインドネシアの国立イスラム大学において企画され、無事開催の運びとなった。また系譜研究の中のイスラム陶器研究は、EU内で経済的な問題を抱えるギリシャのベナキ博物館で行われており、社会情勢は必ずしも安定していないが、調査の方は順調に進められている。また地域比較研究においても、中東地域以外の東南アジア地域や中央アジア地域においても、個別の研究が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
系譜研究は、イスラムの基層の生活文化に最も密着した窯業と、理論分野における天文学という二つの柱を掲げる。具体的には、窯業分野では、アテネのベナキ博物館所蔵資料を対象として、アッバース朝時代(9世紀)からセルジュク朝時代(11~13世紀)にわたるイスラム陶器の釉薬と胎土に関わる技術革新の系譜を分析する。地域比較研究では、以下のような内容で研究を進める。 1)経済・ビジネス分野では、中東と東南アジアの経済・金融の動向を分析する。特に中東では、2011年初頭の政治変革以後、政治体制が大きく変わりつつあるが、多くの国で進行するイスラム潮流が、経済・金融活動にどのような影響を与えるかを探る。また中東・北アフリカのチュニジア、リビア、エジプト、イエメン、バハレーンという国々で顕在化している民主化の動向の中で、インターネット等の情報通信がどのような影響を及ぼしているかを分析していく。 2)社会意識分野では、イランのシーア派の宗教学院の制度改革が国際化の動きの中でいかなる変化をもたらし、科学技術がどのように利用されているかを明らかにする。また東南アジアから日本へ向うムスリム移民のネットワーク形成にITがどのように活用されているかを把握する。 3)教育・文化分野では、東南アジアのマレーシアを事例に高等教育の政策動向を把握し、エジプトでは2011年の政治変革によって、これまで情報通信と深く結びついてきた文化行政のあり方がいかに変化するかを分析する。 4)情報技術分析分野では、主に東南アジアのマレーシアとインドネシアを比較の対象とし、特に情報ファイルやテクノロジーを所有する企業との関わりや情報管理のあり方に着目していく。
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Research Products
(14 results)