2011 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア熱帯におけるアリが介在した動植物6者共生系の多様性の進化
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22255001
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
市野 隆雄 信州大学, 理学部, 教授 (20176291)
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Keywords | オオバギ属 / シリアゲアリ属 / 共進化 / 分子系統樹 / 核DNA / マレーシア / 東南アジア / 熱帯雨林 |
Research Abstract |
1. マレー半島内の7地点において、熱帯雨林に生息するアリ植物オオバギ属の共生アリを132コロニー採集した。標高1000m前後がオオバギ属のアリ植物種の分布上限であること、標高にかかわらず寄生昆虫の生息が認められることが明らかになった。 2. 寄生昆虫(タマバエ科、シジミチョウ科、カスミカメムシ科)のうち、カスミカメムシ科についてはマレー半島から3種が認められた。ボルネオから得られた4種も含め、これらは全てヒョウタンカスミカメ属の新種であった。 3. 系統解析に必要な遺伝子マーカーの検索ならびに開発を行った。その結果、アリ:6つの核遺伝子領域(28srRNA, Argk, Histon, Ef-1α, LWRh, wingless)、カイガラムシ:2つの核遺伝子領域(wingless, Ef-1α)、シジミチョウ:5つのmtDNAおよび核遺伝子領域(ND5, 16S rRNA, 28S rDNA, CAD, ITS-2遺伝子)をそれぞれ新たに開発した。 4. マレー半島とボルネオ島の13地点から採集したオオバギ共生アリについて、核DNAの8遺伝子領域(約3000bp)に基づく分子系統樹を作成した。ミトコンドリア系統樹とは多くの相違点が認められた。カイガラムシの核DNA系統樹を解析した結果、9つの系統に分かれ、それぞれの系統には単一のカイガラムシ種が対応していることが明らかになった。 5. 核マイクロサテライトマーカー5遺伝子座を用いて、ボルネオ島のLambir国立公園内において採集された99コロニーの共生アリの遺伝子型を決定しSTRUCTURE解析を行った。その結果、LambirのアリはmtDNA系統と大まかに一致する6つの遺伝的クラスターに分けられ、それぞれが高い寄主植物特異性を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東南アジアでの広域サンプリングにより、不足していたマレー半島のアリ・寄生昆虫のサンプルが充分に得られた。また、困難なアリの核DNA系統解析に関しては、多数の新規プライマーを開発することにより分子系統樹の作成にこぎつけた。さらに、マイクロサテライトマーカーを用いた解析によって、アリの系統判別を簡便におこなうことが可能となった。寄主特異性など、この系における相互作用の正確な評価に繋がるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
寄生者のカメムシ類が想定以上の種の多様さを示していることが明らかになったため、アリ・オオバギとの種特異性解析・共種分化解析・共多様化解析を行うべく、サンプル収集を集中的におこなう。アリの核DNA系統樹を完成させ、ミトコンドリアDNA系統樹との相違点の検証、核DNA系統にもとづく寄主植物特異性の検討、および植物との共種分化の再解析などをおこなう。アリのマイクロサテライト解析については、寄主特異性の低いmtDNA系統が優占するマレー半島のUlu-gombak地域で採集された約100サンプルの解析を行い、mtDNA系統との対応性や寄主植物特異性について、Lambir地域との相違点を明らかにする。
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Research Products
(5 results)