2013 Fiscal Year Annual Research Report
ウォーカー循環系における大気振動と山岳の森林限界の形成
Project/Area Number |
22255002
|
Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 兼弘 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20324684)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 直紀 京都大学, その他の研究科, 准教授 (40335302)
清野 達之 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (40362420)
蔵治 光一郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (90282566)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 生態学 / 植物 |
Research Abstract |
気象班は、ガラパゴス諸島イサベラ島とボルネオ島キナバル山にそれぞれ3台設置された気象測器について、センサーの交換などの保守作業を行い、これらから気象データを回収した。これまでに蓄積した気象データについて解析を行い、南方振動係数と大気乾燥度の関係を明らかにした。 植生班は、ハワイ諸島ハワイ島のマウナ・ロア山の森林限界を挟み、低標高の森林(100 m)から森林限界上方の低木林(2400 m)にかけての標高傾度に沿って、一定標高毎に優占樹木(ハワイフトモモ)の形質の調査を行った。各調査地点において、合計40個体のハワイフトモモを選び、樹高と直径の計測を行った。また、各樹木直下の土壌深も計測した。各個体の樹冠上部から葉を適当量採集し、葉属性(サイズ、面積当たり重量、トライコーム量など)を計測した。得られた葉属性の変異がどのような環境要因によって決まるのかを明らかにするために、葉属性と気象因子について多変量解析を行った。 生葉の一部については、解剖学的な特性を明らかにするための標本として固定した。また、葉トライコーム量の遺伝学的基盤を明らかにするために、生葉の一部をシリカゲルで乾燥させ、京都に持ち帰った。さらに、野外においては、異なる葉トライコーム量を持つ個体の新芽を採集し、RNA固定液に浸して持ち帰った。mRNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて塩基配列の解読を行った。全サンプルの配列からシロイヌナズナの情報をもとにして機能的注釈付けを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は全般的にほぼ計画通りに進行した。気象データの回収とその解析は順調に進んでおり、Walker大気循環と太平洋熱帯山岳の山頂部の気象特性の関係が明らかにされつつある。また、気象特性との関係から、ガラパゴス、ハワイおよびボルネオの熱帯高山の山頂部での植物群落の生態が明らかにされた。本研究では、乾燥ストレスが自然選択としてどのように樹木集団に作用するのかを明らかにすることが究極的な目標であり、これについてはハワイとボルネオでそれぞれモデル植物を設定して遺伝学的解析と生理生態学的解析の併用により解明に挑んでいる。特に、今後、葉のトライコームが樹木の乾燥適応を決めていることを証明する予定である。しかし、トライコーム遺伝子が未だに見つかっておらず、これが若干の研究上の遅れとなっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究期間も残り1年となり、大気乾燥による樹木集団への選択効果の証明に絞って研究を展開したい。これまでガラパゴス、ハワイおよびボルネオの熱帯高山について調査してきたが、上記を証明するために、ハワイのモデル植物であるハワイフトモモの集団遺伝を特に重点的に扱う予定である。まず、ハワイフトモモの葉トライコーム遺伝子を決定し、大気乾燥度の異なる複数の集団間において、個体レベルの生存率・適応度と、中立および適応的遺伝子座における対立遺伝子頻度の違いを明らかにする予定である。また、トライコームの乾燥適応については、トライコームの量と水蒸気の気孔コンダクタンスの関係を実測及び理論的な観点から明らかにする。
|
Research Products
(4 results)