2011 Fiscal Year Annual Research Report
ラオス国の再定住地区住民の水系感染症とそのリスク管理手法に関わる国際協力研究
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22256003
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
中村 哲 独立行政法人国立国際医療研究センター, 研究所熱帯医学・マラリア研究部・熱帯医学研究室, 室長 (40207874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
翠川 裕 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (10209819)
波部 重久 福岡大学, 医学部, 講師 (70037430)
松田 肇 獨協医科大学, 医学部, 名誉教授 (30114648)
渡部 徹 山形大学, 農学部, 准教授 (10302192)
翠川 薫 三重大学, 大学院・医学研究科, リサーチアソシエイト (20393366)
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Keywords | ラオス / 水系感染症 / リスク管理 / 下痢症 / 吸虫症 / フィラリア症 / 国際協力 |
Research Abstract |
2年目の実施計画である、(1)水系感染症の病因の分布の解明、(2)住民生活基盤の特性の解明、(3)疾病リスクマップの作成と保健教育手法の確立に沿い研究を実施した。(1)に関してはアタプー県調査対象村落の井戸水および隣接する河川水のPCR分析から前者で赤痢アメーバ、後者ではNAGビブリオ菌を検知した。この菌は我々が報告したNAGビブリオ021に関連する特異DNA配列を持っていた。また同集落で5歳から13歳までの149名について実施した血液検査でマラリア感染はなかった。しかし、同地ではヒトフィラリア感染疑い3例について夜間採血検体を実施し、PCRとDNA配列分析で地域のバンクロフト糸状虫感染を再確認した。カムアン県内対象地域のダム湖と集落の井戸水からは発症にかかわる病原は検出されなかった。(2)では栄養に関してアタプー県およびビエンチャン首都圏の対象村落で5-13歳の集団それぞれ149名と153名について身体計測を実施した。結果はローレル指数で示す「やせ」の割合がアタプー県で19%、首都圏でも26%と比較的多く見られた。また地方の食生活の聞き取りからタンパク質の摂取は魚類を中心に比較的高いことが判明した。さらに淡水魚の生食に関わるラオスの伝統的調理法を体系的に報告し、タイ肝吸虫(Ov:Opisthorchis viverrini)症と淡水魚の生食のリスクについて指摘した。(3)では昨年度の山岳地域寄生虫調査839例のリスク分析から識字教育がOv感染の、また安全な水の使用が鞭虫の、正のリスク因子であること。さらに、村落間の比較で、子供の割合が回虫と鞭虫の負のリスク因子であることを見出した。一方、首都圏の1集落での寄生虫調査(140例)からOv感染が69例(49%)と高く、食習慣や宿主の生態と分布にリスクが依存することが示唆され、対応する地域保健教育法の確立を促した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度3月に起きた東日本大震災による影響で研究会議の延期や一部研究分担費の繰り越しがあったが、研究遂行に大きな影響はなかった。本研究の実施はラオス国のカウンターパートである国立パスツール研究所(IPL)と主任研究者が所属する施設との今後の研究協力強化に実質的に寄与する結果となっている。昨年度のカムアン県ナカイ郡での寄生虫調査結果はラオス政府とその国策会社の公式報告書にも掲載された。本年度の成果の一部を、ラオス人研究者と共同でのコレラの総説(環境水・食品のデータ分析を含む成書の一章)として出版した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究の最終年度であり、今年度までの研究を継続するとともに、特に調査地域の寄生虫症を中心としたリスクマップを主体に水系感染症のリスク管理に関する知見を総合し、研究成果を政策提言に結び付ける。また本研究の成果をProceedingsとして出版し、国際的に広範囲に発信することで国際協力研究の事例として定着させる。
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Research Products
(9 results)