Research Abstract |
本年度の具体的な研究成果は下記の3点にまとめられる. 1.機械翻訳を用いた多言語間会議支援において,複数人による協調作業支援(All for one型支援)手法を提案した.複数人による協調作業支援は,同一人数による協調なしの支援よりも,会議内容の網羅性および各人の作業量の低減において,効果が高いことを明らかにした,また,入力競合の低減のために,リアルタイム入力状況提示機能および利用者の識別可能なテレポインター機能を提案し,競合防止に効果があることを示した. 2.対面環境における機械翻訳を用いた多言語情報提供支援において,Webから多言語情報(テキスト,画像)を提示する手法を提案した.会話中の発言を利用した関連情報を多方面から提供することは,対話活性化の効果が高いことを明らかにした.また,音声入力およびタッチ入力は,リアルタイム対面環境での操作が可能であることを示した. 3.多言語用例対訳における不正確用例抽出のために,Web上の検索エンジンを用いた正確性判定手法を提案した.提案手法は,正確性判断の自動化のための指標となり得ることを明らかにした.また,不正確単語(スペルミスや存在しない語句)および不正確文法(個々の単語は正確だがつながりが不正確)の抽出を目的とした適切な閾値を設定することで,精度の向上が可能であることを明らかにした. 本研究成果は,機械翻訳やWeb上のデータに対して「人による支援」を適切に介在させる多言語間コミュニケーションの高信頼化手法と知識抽出手法を提案した点,さらに,その実現方法と効果を,実問題を通じて明らかにした点である.本研究成果は,精度が不十分な機械翻訳やWeb上のデータに対して,人の力を効果的に関与させ,幅広い状況で利用可能な応用システムに橋渡しをする点で,重要な意味を持つ.
|