2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22300090
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
酒井 宏 筑波大学, システム情報系, 教授 (80281666)
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Keywords | 認知科学 / 脳・神経 / 神経科学 / 画像・文章・音声認識 / 感性情報学 / 計算視覚科学 |
Research Abstract |
物体認知に至る最も根本的な問題は,形状の知覚とその皮質表現である。本研究は,その知覚現象を明らかにし,それを生起する神経機構を明らかにすることを目的とする。本年度は,面(図)が知覚されるための準大域的な輪郭の特徴を心理物理学的に明らかにした。さらに,2次元面表現から3次元形状表現への変換・形成の基礎機構となる計算論的モデルを提案した。 輪郭が内在するどの特徴が面(図)を決定する因子であるかを,心理物理実験によって明らかにした。具体的には,まず自然画像輪郭を呈示して,それぞれの図方向判定に要する反応時間を計測した。自然画像(Berkeley Segmentation Dataset)から視野角約15度幅の領域を選択し,この領域内部の輪郭(準大域的輪郭)を被験者に呈示した。反応時間(図知覚の難易度)を測定し,これと輪郭が内在するどの特徴とに関係があるかを解析した。反応時間と刺激特徴の関係は,計算統計解析・多変量解析によって客観的・定量的に導いた。可能性のある特徴(e.g.,凸性,並行性,閉合性)について最適化多重回帰分析を実施して,因子として可能性の高い特徴を探索した。この結果、閉合性がもっとも面決定に効果があり,続いて凸性が有効であることが示された。 計算論的には、輪郭の幾何学に基づいて生成される同期について検討した。シミュレーション実験を行ったところ、同期の程度が凸性・閉合性によって変化する現象が観察されたが、同期の変調程度が小さかったことから、これが知覚の主要因とはなり得ない可能性が示された。さらに、局所的には左右眼像から算出された2つの2次元中心軸表現を融合することによって3次元中心軸を決定するenergy modelを提案した。シミュレーションによる検討の結果,このモデルはヒトの知覚と同等な3次元形状表現が実現できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心理物理実験を実施し、所期の目的である面決定を導く輪郭因子を同定した。さらに,計算論的検討によって、2つの単眼性2次元中心軸を融合して3次元形状を表現するメカニズムの妥当性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
面決定を導く輪郭因子について、さらなる心理物理実験を実施して、知覚的な輪郭の類似度を算出し,多次元空間での各因子の主作用・交互作用を明らかにしている。また,モデルを拡張し、腹側経路に沿って形状情報が統合されて、2次元形状の表現がどのように形成されるのか、さらにどのように3次元形状知覚へと繋がるのかを研究していく。
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